医学界新聞

 

感染看護実践の学的基盤の確立をめざして

第1回日本感染看護学会が開催される


感染看護の研究・教育・実践者が一堂に

 看護界に,また新しい学会が誕生した。日本感染看護学会(Japanese Society of Nursing Care and Infection Control)の第1回学術集会が,さる3月24日に,神奈川県・相模原市の北里大学キャンパスで開催され,同時開催された総会の場において学会として発足。同学会は,「感染看護の実践の学的基盤を確立するとともに,感染看護実践活動の質の向上に寄与すること」を目的に設立された。なお,理事長には今回の学術集会長を務めた林滋子氏(北里大)が就任。また総会では,会則の審議が諮られるとともに,理事4名,幹事17名,評議員21名などを選出した。なお,同学会では会員を募っている(連絡先は下記)。
 今学術集会では,午前中に細菌汚染の実態調査や,感染に対する意識調査の結果報告など,9題の一般演題発表が行なわれた。その後,総会を挟んだ午後からは,招請講演 I「病院におけるクリニカルナーススペシャリストの役割」(UCLA School of Nursing Anna Gawlinski氏),II「感染管理-新たなミレニアムに向けての看護の課題」(同 Elizabeth Cattell氏)の他,シンポジウム「感染看護学の研究課題」(司会=林滋子氏)が行なわれた。

感染看護の方向性が示される

 招請講演 I を行なったGawlinski氏は,急性心筋梗塞患者ケアの例を中心にクリニカルナーススペシャリストの役割を紹介。患者への広範囲にわたるケアの提供が病院における使命であるとした上で,(1)臨床家,(2)教育者,(3)コンサルタント,(4)研究者,(5)リーダー・管理者としての役割があると,それぞれについて解説を加えた。特に(3)については,「患者,家族,および看護スタッフの問題解決のための意思決定を助けるが,決定をするのではなく,アドバイスをするにとどめること」と述べた。
 一方,「看護職者が微生物学,免疫学,臨床医学,疫学に関する知識,技術を学び,それらを実践の場で適用するという考え方のみでは感染防止に十分な効果をあげ得るとは言い難い。感染防止の効果をあげ,ケアの質を高めるには看護学の視点から,看護が独自に取り組むべき課題を見出す必要があり,感染予防に関する行動へ移るべき」との趣旨で企画されたシンポジウムには,堀井理司氏(島根医大),渡部節子氏(横市大看護短大),佐藤淑子氏(北里大)の3氏が登壇。総合討論の場では,「手袋着用」等の是非が問われるなど,これまで感染予防に必要と習慣化されてきたものへの認識が変わってきていることが論議され,感染看護学の方向性が示された。
◆学会事務局:〒228-0829 相模原市北里2-1-1 北里大学大学院看護学研究科感染看護学研究室
 TEL(042)778-9817/FAX(042)778-9469