医学界新聞

 

第28回日本集中治療医学会 看護部会開催


 第28回日本集中治療医学会が,さる3月8-10日の3日間,高野照夫会長(日医大)のもと,東京・文京区の文京シビックホールおよび東京ドームホテルを会場に開催された(本紙2433号に既報)。
 同学会の看護部門では,「ICUにおける感染症リスク軽減への対策」(米・Center for Disease Control & Prevention T. G. Emori氏)など,外国からの招請講演2題をはじめ,「集中治療室における患者の事例を通してみるか診断」(日赤看護大 黒田裕子氏)など教育講演4題,シンポジウム5題,パネルディスカッション2題(1題は医師部門と共同),ワークショップ2題などが企画された。本号では,それらの中から,ワークショップ II「臓器移植とヒューマンケア」を報告する。

移植医療における看護者の役割とは

 渡辺淑子氏(杏林大),須崎伸一郎氏(武蔵野日赤病院)を座長に行なわれたワークショップ II では,「行政の立場から」岩崎康孝氏(厚生労働省),「移植医の立場から」佐野圭二(東大),「ドナー側の医師と看護者の役割」辻村雅樹氏(市立八幡病院),「脳死臓器提供者とその家族への援助」志村陽子氏(駿河台日大病院),「脳死臓器提供における家族支援-移植コーディネーターの立場から」菊池耕三氏(日本臓器移植ネットワーク),「生命の大切さを伝える旅に出て-米国でドナーとなった娘に学ぶ」間澤陽一氏(日本ドナークラブ)ら6名が登壇。
 岩崎氏は,移植における行政の役割として「速やかな推進のための情報提供」をあげ,その中で精神科医も大きく貢献することを示唆した。また佐野氏は,肝移植に関して歴史的考察を加えるとともに,「脳死肝移植の場合は家族が,生体肝移植の場合は本人自らが決定権を有する」と指摘した。
 辻村氏は,脳死臓器移植医療における看護者(提供施設)の役割として,「脳死状態の医療をターミナルケアと位置づけ,患者の人権や自律性(主体性)を尊重した上で,家族の意思やプライバシーを遵守する。そのためには病状の十分な説明と温かいケア,家族の看取りの場所と時間を提供すること」が必要だとした。次いで志村氏は,「患者に別れを告げようとする家族を,精神的に援助することが重要」と述べた。
 菊地氏は,家族支援の1つとしてマスコミ対策をあげた。また間澤氏は,「理性的判断とは裏腹な,親としての感情が,ドナー家族にはある」と述べ,「ドナー家族へのケアも考えてほしい」と訴えた。
 なお,総合討論の場では,「ICUではターミナルケアをどうとらえるか」などについて論議された。