医学界新聞

 

21世紀におけるPOSの意義を論議

第23回日本POS医療学会大会開催


 さる3月24-25日の両日,第23回日本POS医療学会大会が,西尾利一大会長(神戸市立中央市民病院副院長)のもと,「21世紀にPOSの心を生かす」をメインテーマに,神戸市の神戸国際会議場で開催された。
 今学会では,大会長講演「POSの活用で医療事故を防ごう」をはじめ,特別講演(1)「IT時代のPOS」(島根医大 森忠三氏),(2)「電子カルテとPOS-先進病院の電子カルテの実演と報告」(島根県立中央病院 石野外志勝氏,渡部春恵氏)の他,教育講演3題が企画された。毎年恒例となった会頭講演では,日野原重明氏(聖路加国際病院名誉院長)が「医のアートを支えるサイエンスとしてのPOS」と題して口演。「POSの実践の業はEBMやEBNの科学に支えられ,患者や家族を細かく心の眼で看取るという経験の中で育まれた知恵に導かれて,問題解決法が賢く選択され,患者や家族をいとおしむ感性豊かな思いで具現されていく」と改めてPOSを定義づけた(2435号に詳報を掲載予定)。

POSで医療事故を防止する

 西尾氏は大会長講演の中で,多発する医療事故の一因として,医療者相互および医療者と患者間の情報伝達のエラーを指摘。自己予防対策の基本として,(1)人はエラーを起こすことを前提に,医療事故を個人の問題ではなくシステムの問題と捉え,組織全体で取り組む,(2)リスクの把握・分析・対処・評価のプロセスが継続するシステムの構築,(3)コミュニケーションの重要性を認識,(4)事故・インシデントについてオープンに議論できる風土を形成することをあげ,「POSが患者中心の論理的診療とケアを可能にし,また情報伝達のツールとしても優れていることから,医療事故防止に有効である」と述べた。

医療におけるIT革命

 特別講演(1)の中で森氏は,Hurstの『Weed(POSの創始者)が正しい10の理由』(1971)の一節「POSの論理性と展開性は,コンピュータシステムのそれに通じている」を引用し,電子カルテの発達とPOSの関連を示唆。IT(Information Technology)時代となる21世紀のPOSの方向性として(1)生涯にわたる個人情報のデータベースとしての蓄積と検索,(2)国内外の病院での診察情報の伝達,(3)実例の蓄積による診断システムの確立,(4)ヒトゲノム分析と予防医学への利用,(5)QOLの向上をあげ,電子カルテは医療情報学の主要な研究課題であり,情報処理の視点からEBMを志向するPOSのIT時代における意義を強調した。
 特別講演(2)では,電子カルテで世界先端のシステムを誇る島根県立中央病院の石野氏(同病院外科診療部長)が医師の立場から,渡部氏(同病院外来看護部長)が看護職の立場から登壇した。
 「統合情報システムとしての電子カルテ」と題して口演した石野氏は,同病院内すべての部門に一元的に連動して存在する統合情報システムIIMS(Integrated Intelligent Management System)について概説。「IIMSのカルテ記載はPOSに則り,発生源入力された情報が,重複記載などの単純作業を経ずに瞬時に関連部門に伝達される。正確かつ迅速に診療できるだけでなく,患者とともにカルテを記載したり共有したりできので,インフォームドコンセントと自己選択の充実が図られ,医療の質の向上に貢献している」と報告した。一方で,個人情報を電子媒体で管理する注意点として,(1)運用管理規定を策定,(2)プライバシーの保護,(3)証拠能力・証明力の保証をあげ,説明・責任・結果の3つの責任が伴うことを指摘。最後に,氏は「21世紀の医療では“一生涯一カルテ”による患者中心のネットワーク医療が推進され,パターナリズムからパートナーリズムの時代へと変遷するだろう」と述べた。