医学界新聞

 

New Millennium Asian Symposium on Rehabilitation Medicine開催


 さる2月17-18日,日本リハビリテーション医学会主催の国際シンポジウム「New Millennium Asian Symposium on Rehabilitation Medicine」が,東京・千代田区の都市センターホテルにおいて開催された。本シンポジウムでは,アジア各国のリハビリテーション医が集い,「卒後トレーニング」,「脊髄損傷」「脳卒中」「小児のリハビリテーション」などをめぐって,熱心な議論が展開された。

アジアのリハ医療の現状

 初日には「Rehabilitation Today」(司会=慶大 千野直一氏,Yonsei大学 Sae-il Chun氏,写真)が企画され,アジア諸国のリハビリテーション(以下,リハ)医療の現状を話し合う場となった。司会の千野氏は,「よく似たバックグラウンドをもつアジア圏の医師がこのように集まるのは,私の記憶でも初めての機会。それぞれの体験を共有して,リハの将来を考える場にしよう」とシンポジウムの趣旨を述べた。
 最初に,日本の現状を里宇明元氏(埼玉県リハセンター)が,特に脳卒中に焦点をあてて概説。介護保険の概要や,日本で行なわれた大規模な脳卒中アウトカム研究などを報告した。氏は最後に,今後の課題として欧文での論文執筆をあげ,「研究成果を世界に発信するためにも,欧文による論文執筆が必要」と述べ,口演を結んだ。
 香港におけるリハ医療の現状をLeonard SW Li氏(Tung Wah病院)が提示。香港政府の最初のリハ白書が1977年に発行されてリハが浸透しはじめた経緯や,救急から慢性期までの医療の流れを概説した。続いて,韓国からはChang-il Park氏(Yonsei大)が,朝鮮戦争の勃発により多数の身体障害者を生み出してしまった社会背景や,1988年のパラリンピック以降,急速にリハが成長した経緯を明らかにした。現在では62の病院を基盤した,リハ医療のハード面での整備を中心に報告した。
 中東アジアからは,クウェートのSafa's Hassan Allam氏(Physcal Medicine&Rehabilitation病院,PMR病院)が登壇。1985年からスタートしたPMR病院は,クウェートおよび湾岸地域で最初に建てられた複合的なリハセンターで,脳卒中や脊髄損傷,膝疾患などの専門クリニックを抱えるなどの実態を報告。一方,サウジアラビアから,Maher S Al Jadid氏(Riyadh Armed Forces病院)が同国の課題として,小児の障害児に対するリハの充実をあげた。
 ポルトガルから中国に返還されたマカオの状況についてはFernando Cardoso Gomes氏(Centro hospital Condo de S.Januario)が概説。続いて,Sukajan Pongprapai氏(The Royal College of Physiatrists of Thailand)は,タイの卒後教育について,上海伝統医学センターとの共同による鍼治療のトレーニングなど,アジア圏内での国際交流プログラムを紹介。同氏は「今後はさらなる国際的な結びつきが重要になる」とし,参加者にプログラムの拡大を提案した。
 口演終了後,司会のChun氏は,韓国で代替医療講座が開設され,リハと結びつけた研究を開始することを明らかにした。最後に司会の千野氏は,「これまで医学とは西欧医学であったが,その化学的発想から脱し,21世紀は自然とともに生きるアジアの智恵を世界に発信していく時」と述べて,シンポジウムを結んだ。