医学界新聞

 

介護保険の課題と展望を論議

第5回日本在宅ケア学会が開催される


 さる1月27日,第5回日本在宅ケア学会が,津村智恵子会長(大阪府立看護大教授)のもと,大阪府・羽曳野市の大阪府立看護大学において,「介護保険と自立支援」をメインテーマに開催された。
 今学会では,会長講演「介護保険と高齢者虐待の早期発見と予防」(津村氏)をはじめ,ワークショップは(1)日本とスウェーデンにおける高齢者ケアと老人虐待,(2)在宅ケアの場に応じた自立支援プログラム-チームアプローチを考える,(3)介護保険を支えるNPOの活動と課題,(4)テレビ会議方式によるテレケア遠隔教育の可能性と課題,の4テーマで行なわれた。また,最終プログラムとしてシンポジウム「スタートした介護保険の課題と展望-諸外国と日本の介護保険制度の比較より」も企画。なお一般演題は,介護保険,高齢者・障害者のケア,在宅サービスなどの領域から62題が発表された。

スウェーデンにおける高齢者虐待

 津村氏は,会長講演の中で高齢者虐待の予防に触れ,「在宅高齢者の虐待防止には,医師・看護婦などの専門家がかかわること,危機状況に第三者が入り風穴を開けることが有効。訪問看護は効力のある手段であり,介護保険は高齢者虐待の早期発見と予防につながる」と述べた。
 また,高崎絹子氏(東医歯大)と佐々木明子氏(埼玉県立大)の両座長のもとに行なわれたワークショップ(1)では,はじめに座長から開催趣旨および日本における高齢者虐待の現状が報告された。引き続き,両氏らと「老人虐待」の共同研究を進めているBritt-Inger Saveman 氏(スウェーデン・カルマール大)が「スウェーデンにおける高齢者虐待」を講演。氏は,高福祉国家として知られるスウェーデンの実態に関し,「虐待を受ける高齢者は,80歳を超える女性がほとんどで,加害者は身近な親族である」などと報告するとともに,その取り組みについても紹介した。

日・独・豪の介護保険制度を比較

 導入から1年を迎えようとしている「介護保険制度」だが,今学会では国際比較の視点から日本の介護保険制度の課題と展望を探ろうと,シンポジウム(座長=大阪府立大 黒田研二氏,大阪府立看護大 上原ます子氏)を企画。長期ケア改革に取り組んでいる先進諸国のうち,ドイツの介護保険制度の概要と現状および課題を本沢巳代子氏(大阪府立大)が,またオーストラリアの介護システムについては加瀬裕子氏(桜美林大)が,さらに日本における実態と課題については内田恵美子氏(日本訪問看護振興財団)が報告した(写真)。
 本沢氏は,「ドイツの介護保険制度は民間非営利団体主導型であり,日本とはまったく別」と紹介。内田氏は,日本の課題として24時間サービスや在宅の要介護認定方法の見直し等をあげた。また,総合討論では質の保証や展望等をめぐって論議された。
 次回は,明年1月26-27日の2日間の日程で,大田仁史会長(茨城県立医療大)のもと,茨城県立医療大学で開催される。