医学界新聞

 

人々の良質な生活に貢献するために
第20回日本看護科学学会が開催される


 日本学術会議登録の看護系団体として,20世紀最後の開催となった第20回日本看護科学学会が,昨(2000)年12月15-16日の両日,川村佐和子会長(都保健科学大)のもと,東京・有楽町の東京国際フォーラムを会場に行なわれた。
 同学会では,「経済的な厳しさにも直面しながら,超高齢社会で始まる21世紀に向けて,看護学も人々の充実した生活を求めて,社会の再構築も視野に入れた課題を追求していく必要がある」(川村会長)とのことから,メインテーマに「社会の再構築と人々の良質な生活に貢献する看護研究」を据えた。
 なお本学会では,会長講演「社会の変化と看護研究」(川村氏),シンポジウム I「社会ニーズを先取りする看護政策論の構築」(司会=東大 村嶋幸代氏,都保健科学大安田美弥子氏),同 II「変革期における看護実践のシステム化―急性期看護から訪問看護まで」(司会=東医歯大病院 鶴田恵子氏,横浜市立市民病院 田中由紀子氏)を中心にプログラムされた他,恒例の交流集会は「臨床における効果的なリスク管理について」「看護教育に用いられるCAIの紹介と将来の課題」など,12テーマが企画された。また一般演題は,昨年を40題近く上回り,口演・示説を含めて320題が発表された。

社会の変革に貢献するために

 メインテーマに沿ったシンポ I(写真)は,「介護保険制度の創設,医療法の改正,地域保健法の見直し等,保健・医療をめぐる動きはめまぐるしい。一方で,障害高齢者,いじめ等の社会問題もクローズアップされている。このような社会の変化に対応し,かつ『人々の良質な生活』をもたらすことに看護学が貢献するためには,どのような戦略を持てばよいのか。また,その方法論の構築を看護学としてどのように取り組んでいけばよいのかを論じ合いたい」(村嶋氏)との趣旨で開催。
 シンポジストには,橋本眞紀氏(かとう内科並木通り病院),堀内成子氏(聖路加看護大),片田範子氏(兵庫県立看護大,ICN理事),久常節子氏(慶大,前厚生省看護課長)の4人(発言順)を迎え,それぞれの意見発表の後に,フロアを交えた討論が行なわれた。橋本氏は,有床診療所からの発信を,また堀内氏は助産の戦略について述べた。一方,片田氏はICNの戦略を通して世界の看護の動向を伝える中で,日独以外の国の「看護婦不足の解消」がICNの課題であることを報告。久常氏は,厚生省(現厚生労働省)での経験をもとに看護政策の必要性と方向性を提示。特に,看護政策を実現させるためには政治的集団の強化が必要とし,「看護連盟」の役割効果と存在意義を強調した。また氏は,「看護政策の学問的研究が必要」と指摘し,その後の討論の話題ともなった。

看護政策学・看護行政学の構築

 フロアを交えた総合討論の場では,久常氏の発言および「保健婦には行政意識が欠けている」とのフロアからの発言を機に,「看護政策学・看護行政学」構築の必要性が論じられるとともに,看護基礎教育の枠の中で「地域看護」までも含めた「看護管理学」を教育することの必要性が討論された。これらを受けて村嶋氏は,「すべての看護職が『管理学』を知っている必要がある。そのためには教育カリキュラムの中に組み入れることが課題となろう」とまとめた。
 なお次回は,本年12月1-2日の両日,片田範子会長のもと,神戸市で開催される。