医学界新聞

 

「日本臨床病理学会」から「日本臨床検査医学会」へ

櫻林郁之介(日本臨床検査医学会会長/自治医科大学教授・大宮医療センター)


「日本臨床病理懇談会」として発足

 2000年11月3日,「日本臨床病理学会」が「日本臨床検査医学会」に改名したことは,50年にわたる学会の歴史の中でも大きな変化です。この学会は,1951年に「日本臨床病理懇談会」として発足し,その2年後,「臨床病理学会」と命名して学会として正式にスタートしました。
 さらに1955年に「日本臨床病理学会」と改名し,1976年には日本医学会の分科会として加盟を果たしました。臨床検査を幅広く扱う学問の名前が「Clinical Pathology」であり,これを日本語に訳すと「臨床病理」になるため,当然学会名もそのようになったわけです。しかし,もともと形態病理を扱う「病理学」があり,古くから「日本病理学会」がありますから,一般の方にはその差がわからず,よく間違えられておりましたが,“病院病理”などのより臨床に近い病理を「臨床病理」と呼んできたわけです。
 今回は,まず学会の名称を検討すべく,約2年前から「学会名称検討小委員会」(中原一彦委員長・東大教授)が作業を始めました。何回かの会合を持たれ,多くの論議を重ねて,今年に入り,評議員へのアンケート調査を行ないましたところ,「変更は積極的に進めるべき」,あるいは「変更やむなし」とされた方が解答者の80%を超え,また,その名称は「“日本臨床検査医学会”である」との意見をいただきました。
 本年7月に開催された臨時総会では,活発な討議が行なわれましたが,改定の方向が了解され,本年11月1日の評議員会,2日の総会でそれぞれ,学会名称変更が承認されたわけです。

Laboratory Medicine「検査医学」の学会として

 このように,21世紀に向かって,名は体を表すように,「日本臨床検査医学会」(Japanese Society of Laboratory Medicine)と改名しました。ただし,誤解のないように敢えて申し上げますが,英語名からもわかるように,「検査医学」であり,「検査医」の学会ではないことです。
 以前と同様,どなたでも出席できますし,誰でも発表できます。大切なことは,21世紀に向かって,臨床検査に携わる臨床検査医,臨床検査技師,臨床検査技師教育を行なっている学校の先生方,検査センターの関係者,また,臨床検査機器や試薬を販売したり,卸し業に携わっている関連会社の方々も含めて,どうすれば臨床検査が医学に貢献できるのか,ということを議論していくことだと思います。

各種委員会の活動

 名称変更は,これを契機に学会の中身を変えていくための1つのターニングポイントであることをご理解をいただきたいと思います。そのために,「学会在り方委員会」(渡辺清明委員長・慶大教授)は学会の本来の目的を明確にし,そのためには何をすべきかを討議しており,近いうちにその内容を公表すべく準備を進めています。当面,学会長の選挙方法の改変,学会を構成している評議員の選考の仕方,評議員の定年制等について討議し,会則を改定しました。
 また,DRG/PPSが施行された際に,臨床検査をいかに効率的に使用するかを考えていく「日常初期診療における効率的な検査の使い方小委員会」(渡辺清明委員長)が作成したガイドライン(改訂版)も,学会の方向性を示すための大事な仕事であります(本紙2402号参照)。
 さらに,「法人化推進委員会」(委員長=筆者)は法人化をさらに推進すべく,文部省との折衝を精力的に続けています。

今後の活動計画

 また,国際臨床病理学会議(WASPaLM)では来年の世界会議(開催地=ドイツ)以降,森三樹雄獨協大学教授が会長に就任します。これは日本およびアジアで2人目の会長が2002年に誕生することであり,わが国の学会の重要性が増すことは明らかです。さらに現在,認定技師制度が複数の専門学会で行なわれていたり,行ないつつありますが,これを1本にまとめるために,当学会と「日本臨床病理同学院」,「日本臨床衛生検査技師会」で話し合う「3者懇談会」が昨年発足しました。何回かの会合の末,「認定技師機構(仮称)」を立ち上げていくことが,ほぼ合意しております。
 また,当学会の活動として,昨年3月から「臨床検査関連団体協議会」を発足させ,「日本臨床検査医会」,「日本臨床衛生検査技師会」,「日本衛生検査所協会」,「日本臨床検査薬協会」,「日本臨床検査薬卸協議会」の6団体,およびオブザーバーとして「日本病理学会」が出席して,検査原価方式等を討議しています。
 今後の本会のさらなる発展にご協力くださるよう切にお願い致します。