医学界新聞

 

日本看護協会プレス懇談会より


 さる11月16日,日本看護協会(以下,看護協会)主催によるプレス懇談会が,東京・原宿の看護協会原宿会館で開かれた。会長挨拶の中で南裕子会長(写真)は,「准看護婦養成停止と移行教育につき,現在,厚生省サイドでの議論の場が設けられず,具体的な進展はない」と准看護婦問題の現状を報告するとともに,「長年の悲願を実現するまで,粘り強く取り組んでいきたい」と,解決へ向けての決意を改めて表明した。

医療過誤防止のために第3者機関の設置を提言

 懇談会では,看護協会の最近の取り組みについていくつかの報告がなされたが,その中でも特に注目を集めている医療事故防止については,昨年4月の提言に続き,改めて「安全な医療・看護を提供するために」とする以下3点の提言を行なった。
1.臨床における医療従事者の絶対的不足の解消
・急性期病床には最低でも「入院患者数対看護職員数1.5:1」
・24時間継続したチーム医療体制を確立する
2.医療事故防止のための調査・分析・支援の第3者機関が必要
3.看護職員の卒後・継続教育の強化と配置
・専門看護師や認定看護師の配置を進める
・看護職員の卒後研修を制度化する
 このうち2.については,全国規模で事故原因の分析と防止対策を徹底させるために,第3者機関において,(1)各施設が事故情報ニアミス情報を提供し,事故調査の専門家が事故の根本原因を分析し改善策を公開することで,事故防止策を全国に徹底する,(2)事故が発生した医療機関には,専門家をまず派遣して調査にあたり,根本原因を分析して防止策を勧告する,(3)事故に遭った患者と家族への支援を行なう。同時に,事故に関わった医療者の自責や不安を含めて,再発防止支援プログラムなどを行なう,という機能が果たされることが必要だとしている。

リスクマネジャー研修に応募者殺到

 また,医療事故防止対策の一環として,初の「リスクマネジャー」の養成研修を本年12月4-8日までの5日間の日程で開催すると発表。当初,本研修の定員は50名であったが,300名以上の応募者があったことから,会場を急遽変更し,応募者全員が受講を可能にしたとのことである。同研修カリキュラムは2段階で構成され,第1段階は「看護領域におけるリスクマネジメント」,第2段階は「病院・組織全体のリスクマネジメント」が行なえる人材の養成を目的としている。なお,本年度は第1段階の教育を実施。修了者は,明年開催の第2段階の受講資格を得ることができる。
 また,「患者への診療情報提供に関する調査」結果(速報)を報告。(1)診療録,看護記録等を,患者の求めに応じて開示するための院内規定が「ある」病院は36.3%,(2)開示院内規定は,基本的に「患者本人のみが対象」が58.0%と最も多い一方,「患者本人が提供・開示の対象となれない(痴呆・死亡等)の場合家族に提示」を定める病院が45.9%,(3)インフォームド・コンセントの取り組みに関する看護部門の自己評価は,全体的に「不十分」との回答が多くみられ,現場においては課題が多い,などとする興味深い結果が示された。
 なお,看護協会は本年5月に「看護記録の開示に関するガイドライン」を作成し,会員に対して現場での診療情報提供の取り組みを進めるように働きかけてきた。本調査は,会員の関心を改めて喚起させるとともに,診療情報提供の現況と課題の把握を目的として実施されたもの,と報告された。