医学界新聞

 

医療の質を高めるために

第38回日本病院管理学会開催


 さる11月1-2日の両日,第38回日本病院管理学会が,河口豊会長(広島国際大教授)のもと,広島市の広島国際会議場で開催された。
 今学会では,一般演題発表146題(うちポスター48題)および課題研究5題と,過去最高の演題数となった他,一般公開された特別講演「脳と高齢化」(北里大 養老孟司氏),学術シンポジウム「医療の質を高める病院システムの展開」(司会=広島大 石川澄氏),公開シンポジウム「公的介護保険導入による介護保険施設への影響」(司会=公立みつぎ総合病院 山口昇氏)を企画。
 また,病院関係実務者を主な対象としたワークショップとセミナーは,前者が(1)「医療者のためのクリティカルパス」(進行=山口県立大 岩本晋氏),(2)「病院経営者論」(進行=坂井市立病院 塩谷泰一氏),(3)「施設環境評価」(進行=国立病管研 筧淳夫氏)の3題,後者は「リスクマネジメント」「電子カルテ」「ユニバーサルデザイン」をテーマとした3題が行なわれた。
 なお本号では,ワークショップ(1)(写真)を中心に報告する。


一般演題発表の話題から

 会員が1645名まで増えた本学会では,一般演題のリスクマネジメント,看護,クリティカルパスの領域では看護職からの発表が相つぎ,看護職の台頭を思わせた。
 一方で,看護職以外からも看護領域へアプローチする発表が見られた。
 濃沼信夫氏(東北大)は「望ましい病床区分と人員配置」を発表。OECD(経済協力開発機構)加盟29か国の過去18年間のデータをもとに,日本における急性期病棟(51万1250床)での看護婦配置に関し,「3:1」「2:1」,またOECD水準である「1.25:1」の可能性を探った。その結果,「一般病院の一般病床を,急性期,慢性期,介護の3種に区分した場合,看護婦配置を急性期2:1,慢性期4:1,介護6:1と,機能に見合った配置にすることが可能」と述べた。
 また,田久浩志氏(中部学院大短大)は,「患者の満足度調査-入院外来,性年代の影響について」を発表。これまでの視点と違った満足度調査に,参加者間で話題となった(本紙4-5面にその内容を掲載)。

退院調整専門看護婦とは

 ワークショップ(1)では,進行を務めた岩本氏から「済生会山口総合病院を中心とした山口市での実践と成果を1つの雛型として,クリティカルパスを考えてみたい」と主旨が述べられ,その後に5名が登壇。
 まず,篠原栄二氏(山口地域ケアセンター・事務局長)は,山口湯田総合医療福祉センターの地域での役割と地域環境整備について報告。医師会の協力,行政と地域住民との話し合いで進められてきた「保健・医療・福祉の一体化」施策が述べられた。
 次いで,湧田幸雄氏(済生会山口総合病院・脳外科部長)が,急性期病院での脳卒中クリティカルパスの経験を報告。氏は,在院日数の短縮よりも,患者の個々における成果と達成が重要となることを指摘するとともに,「急性期-回復期-リハビリテーション期の連携および地域後方支援病院の設置がこれからのクリティカルパスのポイントになる」と述べた。その一方で,パスの効果から平均在院日数は短縮安定してきたが,地域性からか入院患者数が大きく伸びることはなく,施設としては,病床稼動率の減少が経営的な課題であるとした。
 また藤井寿恵氏(同病院・看護部長)は急性期病院の立場から,松田カツコ氏(済生会湯田温泉病院・看護部長)は慢性期病院の立場から,それぞれに「医療と介護をつなぐクリティカルパス」を報告した。前者では,アウトカム・ゴールを明確にした「地域をつなげるクリティカルパス」について,後者では「患者・家族は在宅へ向けた相談窓口があることを知らない」と述べ,在宅支援に向けた取り組みを解説した。
 さらに倉田和枝氏(済生会山口総合病院・退院調整専門看護婦)は,退院調整の業務と効果について発表。倉田氏の役割については,本紙2234号(1997年3月31日付)に詳しいが,氏は退院指導と退院調整の相違点について,「退院指導は,患者の疾患による日常生活への影響を中心に,アフターケアについて,食事や服薬・生活の仕方などを指導するもの。退院調整は,患者の退院後の場所や生活方法,支援体制などについて総合的かつ他職種の参加のもとに支援するもの」と定義づけた。その上で,自身の役割を述べるとともに,退院調整専門看護婦設置の効果に関して,(1)患者・家族のQOLの上昇,(2)看護職・医師など医療スタッフの意識の変化から,チーム医療の意識が向上,(3)社会的入院などの長期入院患者の減少などをあげた。