医学界新聞

 

家庭医の「専門性」を見てほしい

伴信太郎氏(名古屋大学医学部教授・総合診療部)に聞く


――米国で家庭医療の実際に触れたいという学生を支援されているそうですね。
 「家庭医療」に限ったことではなく,若い学生時代に海外へ行き,見聞を広めるのはよいことです。今回も学生たちが「米国の家庭医療を見たい」というので,交流のあるマイク・フェターズ先生(ミシガン大助教授),佐野潔先生(同大臨床助教授)らにお願いしました。学生が積極的に「海外で学びたい」と言うのならば常に応援したいと思っています。

米国の家庭医療を知ることの意味

 また,日本の医学部は臓器別の診療科による教育に偏り,学生が,患者さんを生活者としてトータルに診る視点を培う機会が乏しいのが現状です。家庭医療学という専門領域が確立している米国で,家庭医による診療の実際に触れることは,「医療のあり方」や「めざすべき医師像」を考える上で大きな刺激を与えてくれると思います。
――名大では,学生はどのように家庭医療に関心を持つのでしょうか?
 総合診療部では,学生も参加できる3つの勉強会(「臨床倫理」,「ファミリー・メディスン」,「Learning Clinical Medicine in English」)を主催しています。また,全国からプライマリ・ケアの教育・研究に関心を持つ医師が参集して行なわれる「名古屋-ミシガン・プライマリ・ケア・フォーラム」(これまでに2回開催)も開催しています。これらの機会を通して,「家庭医療」に関心を持った学生はいると思います。
 日本ではまだ,家庭医が専門医として認識されていませんが,社会的には間違いなくそのニーズはあります。幅広く勉強する中で,「家庭医療」に関心を持つ学生は少なくないようです。
――日本でも「家庭医療」の重要性が医療界に認識されるようになるでしょうか?
 徐々にそういう方向に向かっていると思います。私は家庭医療に関心のある学生のすべてが,必ずしも「家庭医」を志さなくてもよいと思っています。しかし,その人たちが専門家となった時には,「家庭医療」への認識と理解を持つ専門家となっているはずです。それが次第に,家庭医と専門医の良好な「連携」を作り出していくことでしょう。長い目で見ると,日本の医療も変わっていくのではないかと期待をしています。
――ありがとうございました。