医学界新聞

 

第8回総合リハビリテーション賞が近藤 敏氏らに授与


 第8回総合リハビリテーション賞(主催=(財)金原一郎記念医学医療振興財団,後援=『総合リハビリテーション』編集室)は,近藤 敏氏(広島大大学院医学系研究科)・他の「高齢者における転倒恐怖」〔『総合リハビリテーション』Vol.27 No.8掲載〕に決定。
 さる9月25日,その贈呈式が医学書院の本社会議室で行なわれ,編集委員会を代表して上田 敏氏(日本リハビリテーション医学会名誉会員,日本障害者リハビリテーション協会副会長)から,賞状,賞楯,副賞が近藤氏に授与された。
 近藤氏の受賞論文は,高齢者が寝たきりになる原因の1つである「大腿骨頸部骨折」の第一要因となる「転倒」に対して,「転倒恐怖」という側面から追究したユニークな研究。
 選考委員を代表して編集幹事の永田雅章氏(市川市リハビリテーション病院院長)が「近藤先生の論文が最優秀に選ばれたのは,わが国でもあまり前例のない“転倒恐怖”をテーマに選んだ着眼点のユニークさにある。“転倒”についての研究はこれまでにもあるが,精神心理面に重点を置いて転倒を捉えたところが素晴らしい」と,選考経過と授賞理由を説明。「今回の受賞論文を契機に,わが国でもこの分野の研究が進むのではないか。受賞論文もこれで完成ということではなく,広がりをもったいくつもの関連研究が期待できる」と,今後の研究の進展に期待を寄せた。
 これを受けて近藤氏は,「9年ほど前に『American Journal of Occupational Therapy』誌上で,『在宅高齢者の転倒と転倒恐怖―作業療法の介入』というテーマの論文を目にしたのが研究の端緒になった。ぜひOTの立場から研究してみようと思い,高齢者にインタビュー調査して,その結果をまとめた。これまで賞には縁がなかったので,今回の受賞は大きな励みになるとともに,大変名誉なことでもある。また,私はOTであると同時に大学院の学生でもあるので,この受賞は所属研究室全体への評価として受け止めている」と喜びの言葉を述べた。
 引き続いて開かれた懇親会では,この賞の生みの親とも言える上田氏が,「心理的な問題は方法論が非常に難しく,転倒の原因に心理的要素がどれだけ働いているかということを,データをもとにして証明された点が非常にユニーク。さらにどのようにして転倒を防止できるかを明らかにすれば2度目の受賞に値する研究になろう」と,今回,作業療法学分野から意欲的な研究を遂行した近藤氏の業績を称えた。
 『総合リハビリテーション』誌の創刊20周年を記念して設けられた同賞の受賞論文は,第1回以降,「リハビリテーション臨床」,「スポーツ医学」,「リハビリテーション基礎医学」,「心理分野」,「理学療法」,「リハビリテーション看護」,そして今回初めて作業療法学分野からの受賞となり,リハビリテーション医学の幅の広さを示すとともに,文字どおり「総合リハビリテーション賞」に相応しいものとなった。
 なお,引き続き来年も『総合リハビリテーション』誌(第28巻)に掲載された論文の中から次回の「総合リハビリテーション」賞が選考される。