医学界新聞

 

診療情報の管理活用法や開示を討議

第26回日本診療録管理学会開催


 第26回日本診療録管理学会が,さる9月21-22日の両日,熊澤淨一会長(前国立病院九州医療センター院長)のもと,福岡市のアクロス福岡で開催された。
 厚生省「カルテ等の情報開示に関する検討会」は,1998年6月の報告書で診療記録(カルテ)開示の方向性を示し,日本医師会も独自に検討。カルテ開示の方向性は定まったようにも見えるが,現実的には普及されるに至っていない。一方では,本年4月より診療報酬体系に「診療情報管理料」が点数化され,病院における「診療情報管理士」の役割が大きくなっている。また,診療情報開示だけでなく,DRG/PPSの導入,病院機能評価,クリティカルパス等の標準化など,医療を取り巻く環境の整備も進んでいる。このような背景を受けて,今学会では診療録・診療情報の管理活用についてのまとめと展望を探るべく,メインテーマに「世紀末の診療録から21世紀の診療情報管理へ」を据えた。


診療情報をめぐる多彩な企画

 今学会では,会長講演「病院スタッフは診療録をどう意識しているか」をはじめ,パネルディスカッション「診療情報開示のあり方を考える」(司会=国立病院九州医療センター 朔元則氏)や,シンポジウム「医療・福祉機能と診療情報」(同=日本福祉大 田原孝氏),同「診療情報の標準化と電子ネットワーク」(同=国立病院九州医療センター 阿南誠氏),同「クリティカルパスと診療情報」(同=国立病管研 長谷川敏彦氏)を企画。さらに,診療情報開示を積極的に支援している福岡市医師会の後援を得て開催された,福岡市医師会一般公開シンポジウム「カルテ開示における診療現場での問題点」(同=福岡市医師会副会長 江崎泰明氏,右上写真)や,診療録管理が診療報酬上評価されたとの観点から,厚生省の担当官を交えての緊急ワークショップ「診療情報管理と診療報酬点数化を考える」も行なわれた。

一般公開で「カルテ開示」を討議

 福岡市医師会一般公開シンポジウムには,(1)大学病院,(2)公立病院,(3)民間病院,(4)有床診療所,(5)内科無床診療所,(6)在宅医療,(7)医事調停委員の7つの立場からシンポジストが登壇し,それぞれが抱えるカルテ開示の現状および問題点を語った。
 その中で(3)の立場から江頭啓介氏(さくら病院)は,「カルテは患者のもの。専門用語をなくし,共有できるカルテとすることが重要」と述べ,日常診療の場で公にしていることを報告した。また(4)の立場からは入江尚氏(入江内科クリニック)が,「医師には,数多く来院する患者の前では十分に説明ができないというもどかしさがあるが,患者の主体的な医療参加と情報の開示は医療不信を解消させるだろう」と示唆。さらに(7)の立場からは大木實氏(大木整形外科医院)が,「きれいな字や絵によるカルテは説得力がある。今後,医師は開示を前提として,これらを踏まえた正しいカルテのあり方を検討していく必要がある」と指摘した。その一方で,(2)の立場から津田泰夫氏(福岡逓信病院)は,「書かなければいけないのだが,書いている時間がない」との切実な実態もコメントされた。