医学界新聞

 

第4回朝日看護セミナー開催

「実践に生かすリスクマネジメント」


 さる9月23日,第4回朝日看護セミナー(共催=朝日新聞社,医学書院)が,福岡市のエルガーラホールで開催された。今回のテーマは「実践に生かすリスクマネジメント」。なお今セミナーでの講演は,(1)「医療裁判における看護婦・士の責任」(日大 押田茂實氏),(2)「『ヒヤリ・ハット』報告を事故防止にどう役立てるか」(杏林大 川村治子氏)(3)「医療事故を防ぐための院内システムの構築」(阪大 中島和江氏)の3題。

ヒヤリ・ハット報告を役立てる

 最初に,法医学者である押田氏は,自身が監修したビデオ「実例に学ぶ-医療事故」から,ある病院で実際に起こった医療事故を再現したシーンを放映。その中に登場する医師と看護婦に問われる刑事責任(懲役・禁錮・罰金),民事責任(損害賠償の有無,誰がいくら払うのか),行政責任(免許取消,業務停止,免職など)はそれぞれ何かを,参加者全員にテスト形式で問題提起。それに答える形で,日本における医療事故の現状や,医療関係者への行政処分のあり方などを,ユーモアを交えて解説した。さらに,氏が企画した講義で,医学生がシナリオ作りから演技まで担当する,実際の医療事故を再現した劇について紹介した。
 続いて,この6月に全国の看護職から収集したヒヤリ・ハット報告に関する中間的な分析報告を行なった川村氏が,医療・看護事故の実際とその背景を概説。氏はヒヤリ・ハット報告を,「一種の事故発生の警告。ここからどう事故を未然に防ぐかがポイント」と位置づけた。そして「ニアミス体験の共有は,事故防止への教訓になりうる」と,その有効性を示唆。そのためには,ニアミスや事故を,単なる個人の問題ととらえるのではなく,フィードバックする。その上で,「組織におけるシステムの問題として事例検討することが重要」とした。なお,実際に事例を分析する際の注意点として,「報告事例は1つの表現形。大したことがなさそうに見えても,実は重要な危険要因が潜んでいることに注意すべき」と強調。最後に氏は20のヒヤリ・ハット報告の実例を紹介し,会場の参加者とともに背景となる問題の検討や,体験を共有する形で講演を結んだ。

院内でいかに医療事故を防ぐか

 一方,中島氏は,組織レベルでの医療事故防止に向けたアプローチの重要性を提示。氏は,病院内で適切に事故・ニアミスを情報収集する方法として,自主的な報告を促す環境整備の重要性を示唆した。さらに収集した事故・ニアミス報告の分析には,「現場をよく知る者による『Root Cause Analysis』(根本的原因分析;医療機関のシステムや診療のプロセスに焦点を当てた事故分析)を行なうことが望ましい」と強調した。
 また,病院という,組織としてリスクマネジメント(RM)構築に取組む必要性を解き,氏がメンバーとして取り組んでいる阪大RM委員会の種々の活動を報告。その中で,イントラネットを活用した,10分程度で入力可能なインシデントレポートシステムを紹介し,RM構築に向けた新しい可能性を示した。