医学界新聞

 

第5回NDC公開セミナーを開催して

棚橋泰之(積善会看護専門学校/NDCメンバー)


 さる9月2日,東京・広尾の日本赤十字看護大学(以下,日赤看護大)において第5回NDC看護診断公開セミナーが「看護診断を実践に生かす『どの診断!?迷ったとき,どうしてますか?』」というテーマのもとに開催され,全国から看護職ら約180名の参加があった。
 NDC(Nursing Diagnosis Conference)は,黒田裕子氏(日赤看護大教授)を中心に,主として関東地区の看護婦(士),看護教員が集まり,月1回の定期的な看護診断に対する活動を行なっているグループである。この研究会では,臨床の視点を重要視し,臨床において使用されている看護診断の適切性や,それに関する問題点,看護診断の評価等について継続的な検討を行なっている。

アセスメントの重要性を強調

 第5回となる今セミナーでは,看護診断が定着してきた現状を踏まえ,看護診断を決定していくプロセスで迷った時に,どのように鑑別していくかに焦点を当て企画された。
 午前中に行なわれた黒田氏の教育講演は,「いま一度,NANDA看護診断分類法,NIC分類法,NOC分類法を理解しておこう」をテーマに行なわれた。黒田氏は,看護過程と看護診断の違いやNANDAタキソノミーⅠの構造と内容,診断名の定義・診断指標・関連因子の意味等について詳しく解説。また,看護診断を決定していくプロセスでは,(1)NANDA9つのパターン内の鑑別,(2)看護診断の抽象レベルでの鑑別,(3)診断指標との合致,(4)関連因子の鑑別等,看護診断を決定する際に迷った時の示唆があり,類似した看護診断名の鑑別は非常に難しいが,(1)-(4)をよく理解することと同時に,各ケースに対するアセスメントが特に重要となることが強調された。

参加者の意見を参考にして

 午後には,グループワークが酸素化・活動・心理の3つの事例別に分かれて行なわれた。参加者には事前課題(全体像の描写と看護診断)が与えられていたが,一様に熱心な取り組みがなされており,それをもとに各グループで活発な討議が行なわれた。最終的には各グループで1つの診断に絞り込んでいき,適切な看護診断へと導いていく体験をした。
 セミナーの締めくくりとして,3つの事例で迷った診断および絞り込んだ診断とその根拠について全体で討議が行なわれ,NDCの見解も紹介された。
 参加者のアンケートには,「アセスメントの重要性や診断が単なるラベリングでないことを再認識できた」,「普段,1つの事例について時間をかけて討議することがないので非常によかった」,「関連因子のあげ方や解釈が人によって異なり,定義の理解の必要性を痛感した」,「診断の妥当性を深く考えず感覚で決めていた部分があり,勉強になった」,「診断指標,関連因子でいつも迷いがあったが,定義をよく理解して考えることが大切と思った」,「他施設の参加者とのディスカッションからの学びが多かった」等が記載されていた。これに対して改善すべき点としては,「グループの人数が多く,共通認識までに時間がかかった」,「グループでの話し合いの時間がもう少しほしかった」,「質問がある時に常時受けつけてもらえるような運営をしてほしい」,「質疑応答の時間をもっと長くしてほしい」,「夏期休暇期間と重ならない時期に行なってほしい」等の意見があった。
 NDCでは,これらの意見を参考に今後も臨床で活用できる看護診断をめざし,看護診断を行なう際の課題について検討を重ねるとともに,来年度に向けた公開セミナーの準備をしていく予定である。