医学界新聞

 

家族看護学のさらなる発展をめざして

第7回日本家族看護学会が開催される


 第7回日本家族看護学会が,前原澄子氏(三重県立看護大学長)のもと,さる9月2-3日の両日,三重県鈴鹿市の「鈴鹿サーキット」内のグランプリホール,他において,「家族看護学のさらなる発展をめざして」をメインテーマに開催された。
 今学会では,会長講演「時代を育てる家族看護」の他,カルガリー家族アセスメント・介入モデルの創始者でもあるロレイン・M・ライト氏(カナダ・カルガリー大)による特別講演「Family Nursing Intervention : The Way to Reduce and Alleviate Suffering」を企画。また,多様化,核家族化が進み,家族機能も変化,縮小している状況にあって,ケアの提供者は,広い視野から家族をとらえる必要があるとの趣旨により,シンポジウム「家族の絆 再構築に向けて-家族看護に何ができるか」(座長=三重県立看護大 川出富貴子氏,市立四日市高等看護学院 長江拓子氏)が行なわれた。なお,初日夕刻には突然の落雷で会場が停電となるアクシデントに見舞われ,演題の発表が翌日に延期されるなどのハプニングはあったものの,一般演題55題が口演,示説で発表された。

母性の育成は家族からはじまる

 前原氏は,特別講演で「次世代を育てる家族の機能」として,(1)生殖機能,(2)性的機能,(3)教育機能,(4)休息機能,(5)保護機能の視点から考察。また,「母性の育成は家族からはじまる」とし,母性看護の視点から見た子の成長過程を解説した。その上で,「少子化,離婚増の中で,家族のマイナス要因をどう予防するのかが看護の役割」と強調した。
 一方ライト氏は,「sufferingとillness belief」に言及し,「苦悩を緩和するために有効なのは,苦悩を認めることであり,家族の苦悩を傾聴するスピリチュアル性である。看護職は,苦しむ人の癒し手になるとともに,癒しをもたらす研究を実践と結びつける可能性を探らなくてはならない」と述べた。なお,本紙ではライト氏らによる「illness beliefモデル」などを話題とした座談会「家族看護学の実践-新たな視点での臨床活用」(出席者=ライト氏,カルガリー大 ジャニス・M・ベル氏,東大杉下知子氏,東海大 鈴木和子氏)を企画。11月20日発行の弊紙看護版に掲載する。

さまざまな視点から家族の絆を探る

 一方,シンポジウム(写真)では西口裕氏(三重県中央相談所)が,子どもの虐待,家庭内暴力,非行の例を紹介する「子どもの問題から家族をとらえなおす」を口演。家庭が内包する問題を示すとともに,家族看護への新たな視座を提示した。また,服部律子(岐阜県立看護大)氏は,多胎児と母子および家族関係の視点から「母子のきずなから家族のきずなへ」を発表。多胎児家族は,ハイリスク妊娠であり,幼児期のしつけも大変であることに加え,「小さい子,弱い子へ対する虐待も生じることから,専門家のアドバイスが有効であり,親も介入を望んでいる」と,その実践から報告した。
 法橋尚宏氏(東大大学院)は,27項目からなる自記式質問表であるFFFS(Feetham Family Functioning Survey)を翻訳(原著掲載;家族看護研究,Vol.6, No.1)。この「FFFS日本語版Ⅰ」を測定用具として,入院患児と健常児の家族機能を調査した結果を報告した。星野和実氏(三重県立看護大)は,生涯(小児)発達心理学の立場から,「孫と祖父母の関係」を口演。異世代間で,互いに内的,外的に活性化する関係を明らかとした。
 なお,同学会の会員数は年々増え,本年3月末で623名を数える。次回は明年9月8-9日の両日,小宮久子会長(千葉大)のもと,千葉市の青葉の森公園芸術文化ホールで開催される。