医学界新聞

 

第43回全国医学生ゼミナール in 香川


香川医ゼミを終えて

上城統士(全国実行委員長・愛媛大医学部6年)

 今年も8月9日から12日にかけて,香川医科大学を主管校に「第43回全国医学生ゼミナール in 香川(香川医ゼミ)」が開催され,全国から600名を超える参加者が集いました。

医師をめざすこ医師をめざすことの喜びと自信

 香川医ゼミでは「医師・医療者をめざすことの喜びと自信をつかもう!-理想の将来像に向けて」をメインテーマに掲げました。知識詰め込み中心で競争的な環境が広がっている医学教育,あるいはあいつぐ医療事故報道などで,医学生の中には将来への不安や葛藤が強まっています。そのような状況の中で私たちは,柳田邦男氏(ノンフィクション作家)の「脳治療革命の朝」に描かれている林成之氏(日大教授・救命救急医学)をはじめ,医師として情熱を持って働いている方にインタビューするなどの取り組みを通じて,医師や医療の仕事のやりがいや喜びを感じながら準備を進めてきました。
 今年の医ゼミでは,このような医師や医療の仕事のすばらしさにも触れ,全国の医学生・医系学生がともに学び交流し,これからの学生生活や医療現場でぶつかる困難も乗り越え,理想の将来像を実現するエネルギーが得られるものをめざしました。

社会に目を向けること
患者さんをトータルにみること

 医ゼミ当日の企画では,記念講演として前川和彦氏(東大附属病院救急部・集中治療部長)をお呼びしました。東海村臨界事故での被爆者の治療を経験して感じた日本の被曝医療体制の問題点をお話しいただき,「社会に目を向けて発言できる医師になってほしい」と医学生に対するメッセージをいただきました。
 文化人講演では柳田邦男氏をお呼びし,「転換期の医学・医療-今,医学生に考えてほしいこと」と題してお話しいただきました。柳田氏は,「今,医学生は分子生物学レベルのことを猛烈に勉強しながらト-タルな人間を見る目をしっかりと身につけなければならない」と述べ,大学教育では後者のほうが軽視されてきたことを指摘しました。そして肺の小細胞癌の患者さんのエピソードが紹介されました。彼は指揮者であったのですが,癌に冒されながらも人生の最後の時期を医療者と協力して酸素マスクをしながら記念コンサートの指揮をやりきりました。医療者と患者さんが力を合わせて織り成したそのドラマには,深い感銘を覚え医療の仕事のすばらしさを改めて感じることができ,患者さんをトータルな「人」としてみることの大切さを実感することができました。

理想の将来像を実現するための一歩に

 その他にもメイン企画や医師養成企画,平和企画,40を超える分科会,交流会などさまざまな企画が行なわれ,それぞれが参加者に感動や展望を与えるものになったと思います。参加者からは
 「医ゼミで学ぶ中で自分の将来像が深まり,医師になることに自信を持つことができた」
 「医ゼミで学んだことを忘れずに,高いモチベーションを持って理想の医師像を探求していきたい」
 「大学生活の中で忘れかけていた自分の初心を医ゼミで学ぶ中で取り戻すことができ,自分の夢にもう一度チャレンジしようと思った」
 「自分のこれまでの人生観が変わった。いい医師になるためにもっといろんな事を学んでいきたい」
 「これだけ多くのことを学ぶことができたのは初めての経験。来年からも絶対参加する」 などの感想が寄せられました。医師や医療に対する厳しい目も向けられ,大学の医学教育に閉塞感が強まる中で,今年の香川医ゼミは多くの医学生に感動と展望を与え,理想の将来像を実現していく第一歩になったと感じています。
 すでに各地で医ゼミで刺激を受けた学生がさらに学んでいこうと,自主的な取り組みを,来年の医ゼミに向けて始めています。これらの取り組みを見て,この夏の医ゼミで多くの医学生が理想の将来像を実現していくエネルギーを持つことができたことに喜びを感じているところです。


医ゼミづくりを経験して

大倉佳宏(現地実行委員会企画局長・香川医大3年)

 今回の第43回全国医学生ゼミナール in 香川では,現地実行委員会の企画局長を務めました。医ゼミという大きな取り組みを1から作っていく過程は決して簡単ではありませんでしたが,終わってみて心から思うことは,「香川で医ゼミをやってよかった。そしてそこに自分が関わることができて本当によかった」ということです。
 医ゼミでは,講演や学生レポート発表などの「学ぶ」企画と,交流会などの「遊ぶ」企画があります。企画局は,これらの企画(すべての企画とは言いませんが)について責任を持って作っていくというとても大切な仕事をします。企画局の仕事をする中で本当にたくさんの仲間に助けてもらい,ともに作り上げていく医ゼミを実感しました。

情熱持つ医療者の姿に感動

 「学ぶ」企画では,僕自身はメイン企画に力を入れました。今年のメインテーマは,「医師・医療者をめざすことの喜びと自信をつかもう!-理想の将来像に向けて」です。このテーマに基づいて作られた今年のメイン企画はたくさんの医療者へのインタビューを盛り込んだことが最大の特徴です。僕自身もたくさんの医師や医療者の方のお話を聞き,そして,医療現場で情熱を持って生き生きと働いておられる姿に感動しました。このことは将来医療者となる自分たちになにが必要かを考えるよい機会となりました。
 「遊ぶ」企画である交流会は,医ゼミの4日間毎晩さまざまな趣向をこらした交流会を行ないました。全国から集まるたくさんの学生が仲よくなれるのも医ゼミの大きな魅力の1つです。
 今年の医ゼミでは,僕自身さまざまな貴重な体験をし,またすばらしい出会いも多く経験し,得るものが非常に多かったです。医ゼミで得た元気と,医師をめざすことの喜びをしっかりと持って,これからの学生生活を頑張っていきます。