医学界新聞

 

〔インタビュー〕

肝疾患診療をめぐる現況と今後の展望

『慢性肝炎診療のためのガイドライン』発行によせて

 
沖田 極氏
日本肝臓学会理事長
山口大学教授・分子消化器内科学講座
 藤原研司氏
日本肝臓学会理事長代理
埼玉医科大学教授・第3内科


『慢性肝炎診療のためのガイドライン』をめぐって

肝がんの8割はC型肝炎から

――先般発行されました『慢性肝炎診療のためのガイドライン』(注1)を大変興味深く拝見させていただきました。まず最初に肝がんと肝炎の関係,また患者さんの動向についてご説明いただけますか。
沖田 まず私のほうから少し概要をお話しいたします。ご承知のように,日本では肝がん(肝細胞がん)で亡くなる方がおよそ年間3万人に達しています。そして,その頻度は年によって変化はありますが,全悪性新生物による死亡統計では男性で3位,女性で4位で,現状は増加傾向にあります(表12参照)。
 この原因を調べますと,わが国の場合は約8割ぐらいがC型肝炎ウイルス感染者からの発がんです。そして,残りの2割弱がB型肝炎ウイルスの感染者であるということからすれば,肝細胞がんの大きな原因は慢性肝炎,あるいは慢性肝炎から進展した肝硬変であることは,因果関係からもはっきりしていることです。そうなりますと,他のがんに関しても言えることですが,特に肝がんは発生してからではなく,やはり早期診断あるいは予防ということを考え,C型慢性肝炎やB型慢性肝炎をきちんと診断して,フォローしていくことが必要になるだろうという結論になりますね。

一般医の認識・啓蒙を主旨とする

沖田 それでは,現在C型・B型の慢性肝炎の患者さんがきちんとフォローされているか,という点になると多少疑問です。どういう点かと言いますと,日本肝臓学会に入っていらっしゃる,いわゆる肝臓専門の先生方は,肝炎と肝がんは密接な関係にあるから一所懸命診ていらっしゃるのですが,専門でない方,いわゆる一般の医家がGPTやGOTだけを見て「肝機能が悪いですね。慢性肝炎ですから,お薬を飲みましょうね」というようなフォローでしたら,それは問題ではないかと思います。やはり慢性肝炎の患者さんをフォローするには,将来において肝がんが発症する可能性を頭の中に置いて診ていただかないと,早期診断も予防も難しいと思います。
 ですから今回,学会として『慢性肝炎診療のためのガイドライン』を作りましたのは,肝臓病を専門としない先生方に「最低ここまでは守ってください。このガイドラインは肝臓学会においては誰も異論をさしはさまない常識です」ということをお伝えしようとするものです。
 今回は日本内科学会,日本消化器病学会,それから日本医師会のご協力をいただいて,広く一般医の方々に配布して,われわれの考え方を普及させることが狙いです。

患者さんに向けた教育も

藤原 沖田理事長のお話でほぼ尽きていますが,いまのお話にもありましたように,肝がんは死因のナンバーワンである悪性新生物の中でも死亡順位が高いです。特に働き盛りの年齢層-40歳代から60歳代に限ると,発生頻度は胃がんと双璧で,そのあたりに重要性が強調されます。したがって,その対策として,『肝がん白書』(注2)を基に,その撲滅に向けたさまざまなガイドラインを出していくことが基本です。
 まず医師を教育する中から患者の掘り起こしということになろうかと思いますが,同時に別の観点から,報道機関などを通して,こういうものはサイレントな疾患群ではあるが,将来的には確実に進行して「肝硬変から肝がん」というルートを辿っていくことを,もっと一般国民にも知らせるべきだろうと思いますね。あえて追加するならそういうことでしょうか。

『肝がん白書』と『肝がん撲滅のために』

行政,報道機関,一般市民への呼びかけを

沖田 藤原先生から「患者さんサイドの教育も非常に必要ではないか」というご指摘がありましたが,これにつきましては昨年『肝がん白書』というものを行政機関,あるいは報道機関向けに提供すると同時に,患者さんや一般市民向けに,マンガなども入れて非常にわかりやすくしました『肝がん撲滅のために』というパンフレットを作りました。
 厚生省が毎年5月の最終週を「肝臓週間」と設定しております。そこで,谷川久一前理事長の発案で,この週間に合わせて各都道府県で必ず患者さんや一般市民を対象にした公開講座を行なうこととし,その中でこの『肝がん撲滅のために』というパンフレットを配布することにしました。つまり行政,報道機関,一般市民,それから医師たちが肝がん撲滅のためには何をしたらよいのかを,それぞれの立場で考えていただくことを願っているわけです。

活発な活動を展開する理由は?

――なぜ現在このような活動が求められているのでしょうか。
藤原 先ほどお話ししました患者さんへの教育という観点から見ますと,現在はB型の輸血後肝炎が確実に防止できるようになりました。また,1989年以降にはC型肝炎が診断できるようになり,その後はC型肝炎ウイルスもスクリーニングテストの中に取り入れられて激減しています。
 しかし,現在は麻薬なども禁止になりましたが,売血も含めて輸血が安易に行なわれていた時代がありました。そして,その頃に感染した人たちが現在,いわば肝がん危険群となっているわけで,肝がんの増加傾向につながっています。そのような歴史的過程から,予防にもうひと頑張りすればその先はさらに見通しが明るいからです。そういうことも,肝臓学会がいま特に力を入れている理由になると思います。
沖田 なぜこのように力を入れているかについてご説明します。藤原先生がお話しになられたように,輸血用血液では献血の際にC型肝炎ウイルスはチェックされていますので,汚染血液が輸血される可能性は理論的にはあり得ません。われわれの予想ではおそらく2015年頃をピークとして,肝がんは自然に減少するでしょう。しかしわれわれ専門医としては,それを漫然と待っているわけにはいきません。
 それからもう1つは,日本では肝がんで亡くなる方は将来的には減少していくでしょうが,欧米諸国はどうかと言うと,増加の傾向を示しています。
 その理由としましては,先ほどの藤原先生のお話にありましたように,わが国のC型肝炎蔓延の理由の1つが,戦後の混乱期のヒロポンの乱用にあったと同様に,アメリカはベトナム戦争の影響が大きいですね。ベトナム戦争直後のさまざまな世情の荒廃が麻薬常用者を増加させ,その結果,患者さんが増えているわけです。
 わが国は懸命に努力して予防法,早期診断法,そして新しい治療法を開発して肝がん患者さんの生命予後の改善に成果をあげてきたわけですから,その経験を世界に還元しなければいけません。それがわれわれの責務でしょう。そういう点も「いまやらなければいけない」という理由の1つではあります。

日本の肝臓病学のレベル

――「世界に還元する」というお言葉が出ましたが,日本の肝臓病学のレベルは国際的にも高いのでしょうか。
沖田 臨床肝臓病学の分野に限って説明しますと,やはりC型肝炎や肝硬変,それに肝がん患者の頻度が高いわけですから,肝がん予防,早期診断,治療に関しては世界の最先端を走っていると言ってよいでしょう。具体的に申し上げますと,肝がん予防ではインターフェロン治療がC型肝炎や肝硬変からの肝発がんを有意に抑えることがわが国から報告されました。また,早期診断についてはアンギオ-CT,鋭敏な超音波診断装置の開発,早期肝がんの組織診断基準,AFP(α fetoprotein)-L3やPIVKA-II(des-γ-carboxy prothrombin)といった腫瘍マーカーなど,あげればきりがありません。
 さらに,治療法の開発も目ざましく,わが国で開発されたものとしましてはTAE(経肝動脈塞栓術),PEI(経皮的マイクロ注入)療法,PMC(経皮的マイクロ波凝固)療法といった局所治療法がございますし,また亜区域切除という外科治療もわが国で開発されたものです。したがいまして,肝がんの臨床に関しまして,わが国は世界をリードしていると申しあげても過言ではないでしょう。
藤原 沖田先生がご指摘のように,わが国の肝がん対策における早期発見と治療体系は,国際的にもっとも高いレベルにあると思いますが,さらに付け加えれば,それに関連する基礎研究,またウイルス学面でも新たに発見され,現在ホットな論議がなされているウイルスもあります。一方,いまだに致死率が高い劇症肝炎の予防や救命に向けた各種の対策もユニークです。

肝疾患診療の従事者に何を期待するか

医療スタッフに何を期待するか

――最初に,一般医のためにというお話が出ましたが,肝疾患診療に従事されるコ・メディカルの方,いわゆる医療スタッフの方に対するアドバイスがあればお聞かせ願えますか。
藤原 以前は医師やコ・メディカルの方々にも,例えば感染力そのものは血液を介する以外はそれほど恐れる必要ないのに,C型肝炎を異常なほど怖がった時代がありました。また,実際の医療の現場では,針刺し事故のようなものを受ける機会が常にあります。わが国ではかなりマニュアルも行き届いていますから,対応も十分にできるはずですが,これが実際に起きた時に,コ・メディカルの方たちが事態を十分に把握していないために恐れる。そして,患者さんに対しても不必要なことを話す場合もあります。そういったことをもう少し払拭できるように,一般の方々と同時に,コ・メディカルの方たちに対しても教育を徹底する。そして一方では,コ・メディカルの方は現場で自分が行動することによって,その安全性,あるいは逆に危険性をはっきりと示すような日常活動が必要と思います。患者さんに対して手本になることですね。私はそのようなことを感じます。

「日本肝臓病患者団体協議会」について

沖田 そうですね。それからもう1つは,「日本肝臓病患者団体協議会」という患者さんの集まりが組織されていますが,その会からわれわれに相談されるものに「差別」という問題があります。
 藤原先生もご指摘のように,医療スタッフの中にも,肝疾患に関する理解が不足しているために,結果的に患者さんを差別してしまうことがあります。また逆に,医療スタッフがC型肝炎でその病院の中で差別されてしまうケース,さらには社会生活の中で「あの人はC型肝炎ですよ」と差別されてしまうケースがあります。そういう事態に対しては,藤原先生がおっしゃったように,正しい知識の普及,すなわち教育しかないと思います。われわれも患者さんを含む社会と一緒になって,差別を是正していく必要があり,また医療従事者も自分が被害者になっている場合もあるし,加害者になっている場合もあるということを強く認識する必要があると思います。そのためには,教育することしか解決の手だてはないのではないでしょうか。

専門医に対する期待

「移植医療」の定着を

――逆に,専門医の方に対する期待という点についてはいかがでしょうか。
藤原 専門医に対する期待としては,「肝がん撲滅」と「移植医療」があげられますね。特に肝移植の定着は大きな柱の1つになっています。
 私自身が現在学会の責任者をやらせていただいていますが,専門医と言えども,まだまだ肝移植の治療学的な位置づけがいまひとつ見えていません。まだ遠い存在という意識が強いですね。それ自体はよい治療方法だという意識はあっても,身近な問題として捉えられていないように思います。
 例えば沖田先生の施設では治療の選択肢の1つにあげていますが,多くの病院では専門医がいても,まだ定着していません。そのあたりをもう少し専門医の方にも理解していただきたいと思います。そして同時に,移植医療の本来の意味づけを学会としても推進していかなければならないと,私は考えています。
沖田 これは藤原先生のご専門の分野になりますが,肝移植がどうして日本で進展しないのかということは大きな問題です。肝移植に対して理解を深めていただく方策をわれわれがもう1度考えるべきでしょう。例えば,肝がん撲滅運動で行なっているように各都道府県単位で努力する必要があるのかどうか。私どもとしましても,もう1度考えてみたいと思います。

長期的展望に立った治療を

沖田 それともう1点の「肝がん撲滅」という観点からは,慢性肝炎の患者さんに何を目的に,どのような治療を行なうかということを明確にすることですね。
 つまり,トランスアミナーゼを正常に維持する努力をすればよいのか。あるいは「その患者さんが10年後,20年後に肝がんを発症してはいけない」という長期展望に立って治療していくのか。そのような短期的な見方と長期的な見方の両方を用いなければならないという難しさがありますね。
 長期的な見方というのは,つまりウイルスを排除ないし減少させればいいわけです。慢性肝炎はC型もしくはB型の肝炎ウイルスの感染ですから,これに対してどのような治療を施せばよいのか。
 まず第1選択肢は抗ウイルス剤です。例えば「インターフェロン」,最近では「ラミブジン」や「リバビリン」という新しい抗ウイルス剤が開発されています。しかしながら,それを「副作用が強い」という認識から,患者さんに「これは副作用が強いから止めましょう」と言うのと,「副作用はこれだけありますが,将来的に見た時には,いまウイルスを叩いておいたほうが10年後20年後に発がんする確率が低くなりますから,これを使いましょう」と言うのとでは大きな違いがあります。
 おそらく肝臓病の専門医は,10年,20年先を見越した治療をするでしょうが,肝炎そのものにしか興味を持っていない医師は,「トランスアミナーゼを下げておけばいい」ということになってしまいますね。やはり専門医でも意志の統一,そしてそのための教育が必要になりますね。
 肝臓学会には「生涯教育委員会」という組織がありまして,そこが企画して毎年学会の折に教育講演会を開催して,専門医に対しても意志統一を図っています。その中では,いま藤原先生がおっしゃった移植の問題も取りあげています。

専門医教育について

藤原 いまわが国では,1998(平成9)年8月に与党医療保険制度協議会が厚生省案を基にして作成した「21世紀の国民医療-良質な医療と皆保険制度確保への指針」に沿って,医療提供体制の見直しが進められております。
 その中で,「かかりつけ医と言えども専門性を明示すべき」と謳われており,新たな認定医・専門医の設立に向けた審議が進められています。内科や外科などの基本診療領域の「認定医」とその上により専門性の高い「専門医」を作ろうとするものです。肝臓専門医も当然必要になりますが,まだ内科・外科系などのカリキュラムの作成段階であります。従来から肝臓学会で実施されてきた認定医制度が基本になると予想されます。

「生活習慣病」としての肝疾患

藤原 それからもう1つ。専門医に対しても特に重要ではないかと思っていることに,いわゆる「生活習慣病」というものがあります。つまり生活習慣が発症の原因や病気の進展要因になるわけですが,これは肝疾患についても言えることで,例えばC型慢性肝炎の人がアルコールを飲みすぎると肝がんになりやすいことは自明です。そういう意味も含めて食生活の改善という問題を,今後は1つの大きな課題として捉え,肝臓学会や肝疾患の専門医が考えていくべきだろうと思いますね。
 一例をあげれば,肝臓の悪い人が普段どのような食生活を維持すればよいのか,というようなテーマは意外に手がけられていません。ところが最近,鉄分が食事の中に入らないほうがよいとか,極端なことを言えば,インターフェロンの効かないC型肝炎に瀉血すればいいという話もあります。そうした面からも食事の問題は今後かなり大きなテーマになりうるのではないかと思います。専門医と言えどもこの点を配慮してみたらどうかなと考えています。

肝臓学会としての今後の課題と展望

「肝がん撲滅運動」の啓蒙

――最後に,学会としての今後の課題と展望についてお聞かせいただけますか。
沖田 やはり肝がん撲滅運動をどのように展開するか,ということが最大の課題になると思います。先ほども申し上げたように,行政機関にもご理解を深めていただき,具体的な方策を検討していただきたいと思います。それから専門医の先生方を含めて,医療を提供する側も,もう少し努力しなければいけないと思います。
 それから,国民の皆さんにももう少しこの疾患に対して関心を持っていただき,何か気になることがあれば,とにかく医療機関に相談していただきたいと思います。先ほど申し上げました肝臓病患者さんの会では,40歳以上の方には,1度は公費でC型肝炎ウイルスのスクリーニングをしてくださいと厚生省に要望しています。なぜかと申しますと,C型肝炎が蔓延した社会的背景を考慮すると,まず戦後の混乱期を支えた40歳以上の方々にウイルス検査をしてしかるべきだと言えるからです。果たして公費でそういうことができるかどうかはわかりませんが,これは非常に重要なことです。一般の国民の方々もC型肝炎あるいはB型肝炎に対して,深い認識を持っていただきたい。学会は広報活動を広く展開していく必要があるでしょう。

肝移植のさらなる普及へ

沖田 それから,先ほどのお話にも出ました移植医療の定着です。
 例えば劇症肝炎というきわめて死亡率の高い病気がありますが,これも移植が可能ならかなりの人が救われます。そういう点でも,肝移植に対する理解や意識を,もう少し深めていきたいと思います。
 やらなければならないことはたくさんありますが,まずこの2点ではないかと思っています。
藤原 そうですね。日本肝臓学会としてなすべき大きな柱は,専門医への期待でも述べたように「肝がん撲滅」と「肝移植」の2つだろうと思います。
 いま沖田先生が言われた劇症肝炎について申しますと,私は最近,1998年の日本の劇症肝炎の実態調査結果を見て少し驚きました。
 劇症肝炎の原因は何かという点に関してはいろいろ議論があります。特にB型肝炎が非常に重要だということは,いまももちろん変わらないことですが,よく見てみますと,さまざまな慢性疾患,例えば糖尿病,精神疾患,高脂血症などの疾患に罹って薬を飲んでいた人が,なぜか劇症肝炎になっているという実態が明確になってきました。こういうことは従来はなかったことで,これがいったい何なのかということを十分に検討して対策を立てたいと思います。劇症肝炎になりますと予後が悪いことが多いので,学会としても一度テーマとして取り上げていただきたいと思います。
 移植医療ももちろん救命率が高いですから,劇症肝炎のどの時期にこれを行なうかを確実に評価すべきでしょう。
 しかし,移植医療はあくまでもこれ以外には救済しようがない,という最終的な手段です。したがって,その前段階が少しでも解明でき,しかも劇症化への予防ができれば,それに越したことはないと思います。この考えは肝がんに対する姿勢と同様で変わりません。

先頭に立って情報公開を!

沖田 最後に,日本肝臓学会としては肝臓病で悩んでいる方々のために,また医療への信頼を取り戻すために,先頭に立って情報を公開していきたいと思っています。
藤原 例えば検診をすると,肝機能異常の原因である脂肪肝の人はかなりいます。この人たちがさてどうなるだろうか,という問題もありますね。これまでは,「痩せれば,それで済む」と扱われていましたが,それだけではいけません。その中には,予後が悪いものもあります。
 現在,わが国の肝疾患にかかわるすべての問題に対して,常に前向きの姿勢で対処したいと思います。毎日の生活をどうしたらよいのか。医療機関はどこに行けばよいのか。そういうことがすべての国民にわかるような指導をしたいものです。
沖田 多少手前味噌になりますが,日本肝臓学会ほどオープンに情報公開を行なっている学会は少ないのではないでしょうか。
 その点からも,歴史的な成果を踏まえて,今後とも「きちんと治療すれば治りますし,予防もできます」という広報を広く展開していきたいと思います。
藤原 そういうことを実行することで,同時に社会的な責任を果たしていきたいと思います。
――本日は,お忙しいところを長時間どうもありがとうございました。



(注1)『慢性肝炎診療のためのガイドライン』:
 「このガイドラインは,第一線で活躍されておられる肝臓病の専門でない一般の医師の方々のために書かれたものです」と「まえがき」に,また「このガイドラインに述べられていますことは,日本肝臓学会の全評議員が常識として承知していることでもあり,慢性肝炎患者さんの日常診療に携わる総ての医師に実践していただきたい内容ばかりです」と「あとがき」に記されているように,主に一般医に向けて書かれたもの。
 主な内容は(1)日本の慢性肝炎の現状(広島大学・吉澤浩司).(2)慢性肝炎の診断(信州大学・清澤研道,田中栄司).(3)慢性肝炎の経過観察(川崎医大・山田剛太郎).(4)慢性肝炎ウイルスの感染予防(愛知医大・各務伸一,福沢嘉考).(5)慢性肝炎の治療(聖マリアンナ医大・飯野四郎)

(注2)『肝がん白書』:
 「肝細胞がんの原因を探ると,ほとんどは肝炎ウイルスの持続感染,中でもB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎や肝硬変を背景に発症することが明らかであり,このことが本邦における年間30万人とも言われる肝硬変症患者数,また3万人とも言われる肝細胞がんによる死亡数となっている。かような観点からすれば,200万人とも言われる本邦の肝炎ウイルスキャリアの中から将来における肝細胞がん患者の発生をどのようにして阻止し,また減らせるかについて官民一体となって考えることはきわめて重要なことである」と「あとがき」に述べられている趣旨の基に,主に行政機関や報道機関に向けて書かれたもの。
 主な内容は(1)日本の肝がんの特徴-世界の肝がんにおける位置づけ(清澤研道).(2)日本の肝がんの特徴-男女別にみた免疫学的特徴(大阪府立成人病センター・田中英夫,津熊秀明).(3)日本肝癌研究会の調査による肝がんの動向(各務伸一).(4)肝炎ウイルスキャリアの動向(吉澤浩司).(5)前がん病変としての肝硬変の動向(清澤研道).(6)慢性肝炎・肝硬変の治療による長期予後の現況(山田剛太郎).(7)医療経済-C型肝炎ウイルス感染症と医療評価(山口大学・井上裕二).(8)肝がんを減少させるための提言(清澤研道)
〔いずれも編集・発行=(社)日本肝臓学会
 〒108-8378東京都文京区本郷3-28-10 柏屋2ビル5F
 TEL(03)3812-1567/FAX(03)3812-6620〕