医学界新聞

 

「ケアの時代の看護管理」をテーマに

第4回日本看護管理学会開催


 さる8月25-26日の両日,第4回日本看護管理学会が,上泉和子会長(青森県立保健大教授)のもと,「ケアの時代の看護管理」をメインテーマに,青森市の青森県立保健大で開催された。
 なお,同学会では,会長講演「ケアの時代の看護管理者の育成」をはじめ,教育講演「専門看護師の雇用と活用-CNSからアドバンストプラクティスナースへの経緯と今後の方向性」(エール大 パメラ・ミナリク氏)や,メインテーマに沿ったシンポジウム「ケアの時代の管理者の役割」(司会=聖隷浜松病院 高嶋妙子氏,青森県立保健大中村恵子氏)の他,一般演題45題の発表が行なわれた。また,インフォメーション・エクスチェンジ(交流集会)は,(1)多職種外来における看護者の役割-発達・評価外来の経験から,(2)「情報開示」に取り組む,(3)看護補助者の業務管理体制について,(4)看護管理とリスクマネジメントの4テーマが企画された。


「専門看護師は定着?」をディベート

 学会恒例となったディベートは,これまでに「看護における質の評価」(第1回学会,横浜市,1997年)や「看護はサービス業として成り立つか」(第3回学会,東京,1999年)などをめぐり賛否が論じられてきたが,今回は「専門看護師は定着するか」がテーマ。
 1995年にスタートした「専門看護師制度」における認定専門看護師(CNS)は,がん看護,精神看護,地域看護の3領域から全国にまだ15人しか誕生していない。一方で,看護系大学大学院では,10の領域からの専門看護師課程がプログラムされ,今後に期待もされている。
 これらを背景に,司会の鶴田恵子氏(東医歯大病院),中里志保子氏(八戸市立市民病院)は,「ケアの時代において,看護サービスの質向上と看護職のキャリアアップは重要課題であり,専門看護師の雇用について,管理の視点から議論する時。専門看護師制度の定着と雇用について,幅広い論点を見出したい」と本ディベートの趣旨を解説。肯定派に田中由紀子氏(横浜市立市民病院,看護管理者),三ヶ木聡子氏(長谷川病院,精神看護CNS),内布敦子氏(兵庫県立看護大,教育者)の3名,一方の否定派には村上美好氏(済生会横浜市南部病院,看護管理者),近藤まゆみ氏(北里大学病院,がん看護CNS),佐藤紀子氏(東女医大,教育者)の3名が登壇。賛否をめぐり熱い議論が交わされた。

専門看護婦定着のための条件

 最初に肯定派を代表して内布氏が賛成論として,「CNSは社会的要請があって誕生したもの」と述べ,その教育の意義などを論じた。また三ヶ木氏も,「看護の質向上のためにも必要」とフォロー。
 一方,否定派からは近藤氏が,CNS10名の現況を語るとともに,孤独とストレスの強い環境にあること,強いチャレンジ精神が要求されることや,認定看護師の活動との間に曖昧さがあり,CNS同士のサポート体制がごく少数であることなどを指摘し,「定着はしない」と明言した。
 その後,双方からの反論や第2立論が闘わされ,最終立論が展開されたが,肯定派の田中氏は,横浜市立市民病院ではリエゾンナースの導入を1992年から試行し,1995年から病院内部の理解が得られ本格的に導入できたこと。さらに,オンコロジーナースの導入に関しては1996年に試行し,翌1997年に導入。同年に,大学院CNSコースの臨床実習受け入れ施設としての基盤も整備され,1999年には他の市立病院にリエゾンCNSを配置するなど,導入までのサイクルが短くなっている事実を報告し,社会的にもCNSが認められてきていることを立証した。
 また氏は,「看護職が安心して働ける職場として,いつでも活用できるCNSの存在は貴重であり,難しい患者にも対応できるメリットがある」とした上で,専門看護婦定着のための条件として,(1)専門看護婦導入に対する看護部長の意思決定と組織の合意,(2)導入したら5年間は強い信念で取り組む,(3)専門看護婦の役割発展のための支援,の3点をあげた。

「専門看護師は定着しない」に軍配が上がる

 一方,否定派の村上氏からは会場の参加者に,(1)CNSと一緒に仕事をしたことがあるか,(2)話をしたことがあるか,(3)活動の様子を読んだ(見た)ことがあるか,(4)会ったこと,見たことはあるか,と質問を投げかけ,その数の少なさから定着が進んでいない現況を指摘した。また,「CNSの導入で質は向上するのか,スーパーバイズができているのか」などを疑問視し,CNSのサポートシステムはできていない,職務規定も曖昧,認定看護師との差が見えてこないことを理由に「CNSは定着しない」と立証した。
 最終判定は例年通り会場の参加者によって行なわれるが,判定者となった20名は,自席近辺に座っている参加者の意見も参考に結論を出した。その結果,本ディベートは15対5で「定着しない」の否定派に軍配が上がった。
 なお,否定派に多くの票が集まり勝利したのは,今回初の快挙。司会の鶴田氏は,「登壇した演者は,自分の意に反して賛否論を展開させた部分もあり,発言内容そのものが本当の自分の意見ではないこともある」と発言し,参加者に理解を求めた。
 次回は,明年8月24-25日の両日,井上悦子会長(佐賀医大)のもと,佐賀市の佐賀市文化会館で開催される。