医学界新聞

 

日本臨床病理学会「DRG/PPS対応臨床検査のガイドライン」作成


 高騰する医療費を背景に,「医療の効率化」は大きな課題とされるが,その1つの方向性として包括医療実施に向けた動きが強まりつつある。
 このような状況を踏まえて,日本臨床病理学会に設置された「日常初期診療における臨床検査の使い方小委員会」は,1998年度より厚生省社会保険基礎調査委託事業(急性期入院医療の定額支払いに関する調査研究事業)を受け,「日常診療における効率的な臨床検査の検討」研究班(委員長=慶大教授 渡邊清明氏)として活動し,このたび「DRG/PPS対応臨床検査のガイドライン」(第2次案)を作成した(写真)。
 同委員会では1998年に第1次案を作成し,昨年4月に発行している。これは厚生省の「急性期入院医療の定額払い方式」診断群コーディングガイドの診断群分類を参考に,9疾患におけるDRG/PPS対象患者の入院を想定した検査ガイドラインを提示したものであった。それをもとに日本臨床病理学会,DRG/PPS試行10病院,日本医師会,関連学会にガイドラインに関するアンケートを実施し,そこで指摘された内容を盛り込み,さらに14疾患を追加したのが今回のガイドラインである(計23疾患,22項目,下記参照)。
 委員会のメンバーの1人である川合陽子氏(慶大)は,ガイドラインについて下記のように解説する。

「効率的」な医療と粗悪診療

 「本委員会は,もともとあった同名の委員会が発展的な解散をした後,1998年に新たに発足されました。そのスタートにあたり委員の間では,活動の方向性としては学問的であるだけでなく,よりプラクティカルな内容にしたいという共通の考えがありました。そのためには保険診療との関係について触れるべきだろうという議論をしていたその時,厚生省内では国立10病院におけるDRG/PPS試行に向けて準備が進んでいました。同時に渡邊委員長が平成10年度厚生省社会保険基礎調査委託事業(急性期入院医療の定額支払いに関する調査研究事業)の依頼を受けたので,両者の協力のもとに,DRG/PPS対象患者さんの入院を想定した臨床検査のガイドラインを作成したのです。1)確定診断に要する検査,2)フォローアップに最低限必要な検査,3)退院時までに施行すべき検査について,できるだけわかりやすく,検査の流れをフローチャートとして示すよう努力いたしました。
 現在の医療の動きとして,できるだけ効率的な医療を行なうこと,つまり無駄をできるだけ省くという考え方が強くなっています。その考え方は,一歩間違えると必要な医療行為ですら病院の利益を守るために省かれてしまうような,粗悪診療の横行が危惧されます。それが,このガイドライン作成の背景にあったと思います」

クリニカルパスにおける臨床検査のガイドライン

 「クリニカルパスが導入される時,『疾患群によって基本的な検査が決められるのではないか』とよく言われます。本ガイドラインは,将来的にはクリニカルパスを導入する際における臨床検査のガイドラインとしての方向性も視野に入れています。
 これまで医師は,漏れがないように検査をたくさんしたほうがよいと思っていました。しかし保険診療の観点からみて,無駄な検査をしてはならない,となった時,何の検査をどのような時に選んだらよいのかについて,結構迷ってしまうと思います。
 日常診療に追われる一般病院の先生たちにとって,ある検査がある疾患に対してどのくらいの特異度を持つかをすべて把握したり,また最新の検査の使い方をキャッチアップしていくのは,とても大変なことです。このガイドラインの目的は,このような医師の方々にとって臨床検査の指針となり,必要な時にベッドサイドで使ってもらえたらよいと考えています」

●ガイドラインに掲載されている疾患
 脳梗塞・脳出血,気管支喘息,肺炎,気管,気管支または肺の原発性悪性新生物または続発性悪性新生物,急性心筋梗塞,心不全,胃潰瘍または十二指腸潰瘍,膵臓の疾患,潰瘍性大腸炎,慢性肝炎または肝硬変,胆石症,RAまたは他の炎症性多発性関節症,膠原病またはその類縁疾患,甲状腺の悪性腫瘍,糖尿病,原発性ネフローゼ症候群,慢性腎不全,卵巣またはその他の子宮付属器の悪性新生物,リンパ腫,多発性骨髄腫および免疫増殖性新生物,慢性白血病,出血性疾患

・ガイドラインに関する問合せ先
日本臨床病理学会「日常初療における効率的な臨床検査の検討」研究班
事務局:慶應義塾大学医学部中央臨床検査部 川合陽子(庶務担当)
 TEL(03)5363-3838/FAX(03)3359-6963
 E-mail:yohkokwi@med.keio.ac.jp