医学界新聞

 

医療費の高騰に苦しむ米国社会
――東京都病院協会の会合でラブキン氏が講演


 さる7月10日,来日中のM.T.ラブキン氏(ベス・イスラエル病院元院長,関連記事を4面に掲載)は東京都病院協会(会長=河北総合病院理事長 河北博文氏)の招きに応じ,東京・大手町のパレスホテルで講演(司会=国際医療福祉大教授 紀伊國献三氏)を行なった。

品質保証と医療費抑制が大きな課題に

 同講演でラブキン氏は,まず,1950年以降の米国医療費高騰の歴史を解説。「米国医療の最大の問題点は医療費が高すぎること。人々は医学の進歩を求めるが支払いはしようとしない」と指摘し,今日さらに増加の傾向をみせる無保険者の問題など,保健医療をめぐる深刻な状況について述べた。
 さらに,高騰する医療費に対し,90年代以降に普及したマネジドケアについては,「ノンメディカルの保険会社職員が診療のプロトコールを作成し,それに従うよう要求するので,医師のやる気やモラルが下がってきている。患者に対して最高の医療を提供できなくなっていることに,医師は不満を感じている」と,行き詰まりつつある現状を示唆した。
 本講演の中で,「米国が医療費抑制に成功するためには何か必要か」という課題が幾度となく話題にのぼったが,それに対してラブキン氏は「そのためには,医師の行動パターンを変えなければならない」と指摘。「さまざまなインセンティブを考慮した新しい支払い方式の開発」,「急性期から慢性期へと重点を置き換えた,新しい医学教育の展開」,「医師に診療行為の標準化を促すデータの収集と提示」などの重要性を強調した。