医学界新聞

 

第37回日本リハビリテーション医学会開催

「リハ医学の確立と展開」をテーマに


 さる6月22-24日,第37回日本リハビリテーション医学会が,石神重信氏(防衛医大教授)のもと,東京の有明・東京ビッグサイトにおいて開催された(2398号既報)。開催テーマは「リハビリテーション(以下リハ)医学の確立と展開-リハ医療の有効性」。さらにトピックスとして「治療成績・アウトカムの比較検討」「リハ医療に必須なクリニカルパス」「介護保険とリハ医療」「在宅をめざす最新リハ工学」を提示している。学会ではこれらのトピックスをベースに,基調講演,特別講演,「ニューミレニアムシンポジウム-21世紀のリハ医療への期待」「介護保険元年-リハ医療はどう対応すべきか」「在宅医療に向けて」などのシンポジウムや,ワークショップ「リハ工学」「義肢装具」などを企画。さらに新企画として「クリニカルパス」と「リハ症例報告」などが行なわれ,多くの参加者を集めた。


 学会初日の開会式に引き続き行なわれた,石神会長による提言「新世紀に積み残した課題」では,(1)医療保険制度改訂はリハに益するか,(2)リハ医学は確立しているのか,(3)リハ医師は育っているのか,(4)リハ医療の質はこのままでよいのか,などの課題を明確にし,「温泉病院から始まった日本のリハは慢性期医療のイメージを払拭しきれていない」と指摘。さらに「リハは今後,急性期医療に進出すべきであり,そのためにも早期リハ導入は必須」と提言し,会場に詰め掛けたリハ関係者にエールを送った。

医療改革とリハ医学の展望

 「医療改革とリハ医学の展望」(司会=横浜市大 安藤徳彦氏,東海大 石田暉氏)は,介護保険や回復期リハ病棟の設置など,リハ医療を取巻く状況が大きく変化する中で,今後の方向性を議論する場となった。
 最初に行政の立場から青木龍哉氏(厚生省)が,第4次医療法改正において見直された,(1)病院区分の見直しや適正な入院医療の確保などの入院医療を提供する体制の整備,(2)広告規制の緩和などの医療における情報提供の推進,(3)医師および歯科医師の臨床研修の必修化などの医療従事者の資質の向上などの点を中心に概説。続いて石田氏は,学会内に設置されている「社会保険等委員会」の活動を通してリハ病棟・病院のあり方を検討した。氏は,リハ医学会研修施設314施設(回答156施設,回収率50%)に,回復期リハ病棟の導入や,クリニカルパスなどからなる7項目のアンケートを実施。氏はこれらの結果からは,(1)急性期の病院では早期・超早期のリハの必要性と退院・転院プラン作成の早期化が求められる,(2)約半数の医療機関で回復期リハ病棟を導入予定あるいは検討中,(3)脳卒中モデルでは症例の重症度により総入院期間に大きな差があり,疾患別の入院期間の設定はリハ医療にそぐわない,(4)慢性期病床群でのリハの問題点は医師やコメディカル不足など,多方面に存在する,と結んだ。
 急性期リハについては長谷公隆氏(慶大)が,急性期リハ医療の標準化にむけた「クリニカルパス」の重要性を強調。さらに氏は「リハ医の診療による機能的予後予測に基づいた入院治療計画が,病院管理ツールとしてのクリニカルパスに組みこまれていくような体系化が望まれる」とした。一方,伊藤良介氏(神奈川リハビリテーション病院)は,リハ病院の機能について検討。「急性期リハの充実度によってリハ病院で必要な治療も異なってくる」としながら,今後のリハ病院には(1)病院独自の機能,特色を持つこと,(2)他の医療機関・施設との連携,(3)リハ効果の検証の必要性を示唆した。

アメリカにおけるリハ医療

 アメリカにおけるリハ医療の現状について,吉田清和氏(ウィスコンシン大)と指定発言として笠原政幸氏(アボットノースウエスタン病院)が報告。吉田氏は,2001年4月から急性期リハの新しい支払い方式(評価にMDS・PACを用いて,FRG分類で支払額が決定,PPSで支払われる)の開始が決定したことを紹介した。また急性期とその後の亜急性期(subacute rehabilitation)の医療制度からみた位置づけなどを概説した。続いて笠原氏は,「アメリカのsubacute careの実態」と題して,アメリカでsubacute careが誕生した背景や,リハ医療を取り巻く医療システムの推移などを概説した。