医学界新聞

 

第50回日本病院学会が開催される


 さる6月15-16日の両日,第50回日本病院学会が,林雅人学会長(平鹿総合病院長)のもと,秋田市・秋田県民会館,他において,「21世紀の展望-病院像の曙光を探る」をメインテーマに開催された(本紙2397号に既報)。

それぞれの立場から問う医療の質

 2日目(16日)の午後に行なわれたシンポジウム「病院医療の質の向上をめざして-病院人の質が問われる新世代」では,岩崎榮氏(日医大)を座長に,医師,看護職,病院長それぞれの立場から5人のシンポジストが登壇,21世紀の医療と病院人のあるべき姿について討論した(写真)。
 まず,「病院人をどう測るか」をテーマに,医師,看護婦それぞれの評価法について検討。医師の立場から真栄城優夫氏(ハワイ大)が,医師に必要な能力とその評価方法について口演。氏は,「医療の専門性にさえ長けていればよかったかつてに比べ,現代は病院の理念を理解し組織の一員として機能する組織人として,医師の社会的常識や人間的成熟度が問われている」と発言。また,看護職の立場からは井部俊子氏(聖路加国際病院)が,現在同病院において実践中という看護職評価のしかけ「キャリア開発ラダー」を紹介。これは,同僚2名を含む4名に評価され,経験差のある看護婦1人ひとりが段階を踏みながら成長し,総じて質の高い看護を実践することを企図して実施された。この被評価者となった看護職の88%が「有意義」,73%が事例を記述することによる経験の振り返りなどが「役に立った」と答えるなど,その成果を報告した。

病院医療の質の向上をめざして

 次に,「教育で病院人の質は向上するか」をテーマに,医学,看護学の立場から検討。医学教育の視点から福井次矢氏(京大)が,「病院人として必要な臨床能力((1)知識,(2)情報収集能力,(3)総合的判断力,(4)技能,(5)態度)を身につけるためには,特に卒前教育が重要である」として,卒前医学教育のあり方に(1)医学知識の再編,(2)技量と態度の評価,(3)医師国家試験の改善の3つの提案を行なった。一方,看護学教育の視点からは上泉和子氏(青森県立保健大)が,新しい看護学の教育指導方法として,成人学習原理やEBN(Evidence-Based Nursing)などのモデルをあげ,自らイニシアティブをとり問題解決ができる「自立・自律型」の看護職を育成する必要性を示唆。また,教育と臨床の連携・協働のシステムが,双方の質の向上につながるとして,看護職の卒後臨床研修の導入が検討され始めていることを明らかにした。
 最後に,塩谷泰一氏(総合病院坂出市立病院)が,約25億円の不良債務を抱えていた同病院再建の原動力となった「かわらなきゃ」の3つの原則((1)意識改革ではなく,意識の覚醒,(2)個の最適化と全体の最適化,(3)経営の安定なくして良質な医療なし)と,諸島の巡廻診察や診療の全情報を開示する「私のカルテ」の作成など,常に患者の立場に立った医療活動を紹介した。