医学界新聞

 

脳卒中保険医療制度の問題点を論議

第29回日本脳卒中の外科学会・
第25回日本脳卒中学会「合同シンポ」開催


 第29回日本脳卒中の外科学会(4月25-26日,会長=慶大 河瀬武氏)および第25回日本脳卒中学会(4月27-28日,会長=杏林大 齋藤勇氏)が,東京・新宿区の京王プラザホテルで相次いで開催されたが,4月26日には両学会による合同シンポジウム「脳卒中の保険医療制度の問題点と21世紀の展望」(座長=九大 福井仁士氏,河瀬氏)が企画された。

脳卒中治療と医療保険制度の問題

 同シンポジウムでは,(1)各国の医療保険制度の相違(東大 若井晋氏),(2)医療保険改革の今後の動向(厚生省保険局 尾嵜新平氏),(3)急性期病院の立場から(北原脳神経病院長 北原茂実氏),(4)脳卒中専門病院の立場から(美原記念病院長 美原盤氏),(5)脳卒中治療の現状-患者1万人の調査報告(日本脳卒中の外科学会脳神経外科医療問題検討委員長 渡邉一夫氏)の5題が報告された。また,同シンポに先立って行なわれたランチョンセミナー「介護保険と地域保険医療」で「介護保険の問題点」を口演した池上直己氏(慶大・医療政策管理)がコメンテーターとして出席した。
 若井氏は,OECD先進各国における医療の現状や制度について報告。また尾嵜氏は,診療報酬制度,医療提供体制などの抜本的な改革が必要としながら,今国会での成立が断念された医療関連法案改正について解説を行なった
 北原氏は,急性期手術からリハビリテーションまでの一貫した治療を行なっている中小脳神経病院の立場から発言。看護体制は1:1をとるなど,現時点で最新最高の「脳卒中センター」なみの診療体制を整えているにもかかわらず,医療保険の下では大規模病院のほうが優遇されている矛盾を指摘。一方美原氏は,これまで厚生省の施策に沿って病院運営を進めてきたものの,「予防から急性期治療,リハビリテーションまでの一貫した治療が,脳卒中専門病院には求められているが,保険医療制度により制約されている」と脳卒中医療保険制度の問題点を明らかにした。
 さらに渡邉氏は,日本脳神経外科学会認定施設590施設を対象に行なった患者1万人のアンケート結果(286施設,8890例)から,平均在院日数などを報告した。
 総合討論では,池上氏が「保険医療における地域格差の是正などは,抜本改革なくしては解決しない」「医療保険は公的負担が望ましい。民間保険は慎重に考えるべき」と発言。また座長の河瀬氏は,閉会にあたり「脳卒中治療の保険制度を考える場合,厚生省だけではなく他の省への働きかけを考える必要がある」とまとめた。