医学界新聞

 

合格体験記


臨床実習を大切に

栗原由佳(東海大卒)

 国家試験の結果が発表され,現在母校の附属病院で新人研修の真っ最中です。国家試験を振り返ってみて,私なりに考えたことを紹介したいと思います。

臨床実習での勉強が国試で活きる

 国家試験対策というとすぐに過去問題集の勉強と丸暗記に走りがちですが,私は臨床実習で目のあたりにしてきたこと,現場で先生方がおっしゃったこと,受け持った患者さんの疾患や合併症など興味を持って成書で調べたことが本番でとても役に立ちました。耳学問,目学問もかなり役に立つのです。
 試験問題を目の前にした時に,過去に同じ問題が出題されていないといって慌てたりせず,問題文から設定されている状態を考慮して選択肢を見ることが大切です。問題に登場する症例が,まったく何も処置されていない状態なのか,初期治療が行なわれている状態なのかによって,次に行なう処置が変わってきます。画像などをみて診断がついたとしても,その疾患について知らないと(良性か悪性かなど)次のステップはわかりません。また,問題に登場する症例が必ずしも病的な状態とは限りません。経過観察でよい場合もあるのです。
 私の学生生活後半を振り返ってみますと,4年生の10月中旬から6年生の10月中旬まで2年間は臨床実習にあけくれていました。合間の長期の休みは旅行をしたり,なかなか会えない友人に会ったり,顔見知りの先生のもとで研究や仕事を手伝ったり,さまざまな施設に実習に行ったりしていました。そんなわけで,この期間は国家試験用の問題集に本腰を入れて取り組む時間はありませんでした。臨床実習が終わった10月中旬から11月下旬の卒業試験対策を始めました。
 東海大は卒試が国試形式なので,卒試の過去問,苦手分野のアプローチ,「kokutai」のマイナーの特集に目を通したりして準備をしました。結果的に卒試の準備で一通り国試の内容に目を通すことができました。卒試の後は大学で行なわれた国家試験対策講義に積極的に参加し,大学が作ったオリジナル国家試験予想問題集(300頁くらいのもの)をやりました。これで国試対策の総まとめができました。
 自分の大学の先生が国試対策講義をしてくださったら参加してください。また,予想問題を作ってくださった場合はやってみてください。いままで馴染んできた先生方からのメッセージは,効率よく頭に入りますし,土壇場になって生きるものです。模試についてですが,年明けに3回受けました。模試は自分の大学で受けましたが,問題文を読み間違える癖を発見したり,マークシートをずらして塗ってしまうことがあったり,コーヒーや紅茶を飲むとトイレが近くなり集中できなくなることがわかったりと本番で注意すべき点がわかるので受けるとよいと思います。しかし,復習できないほどたくさん受けるのは無意味です。
 最後に,勉強とは直接関係ないのですが,本番に向けてのマインドコントロールにも気を使ってください。試験場の下見をし(構内に入る時は守衛さんに断ってから入りましょう),トイレの位置を確認し,当日持って行くものをチェックし(昼食,補食,飲み物なども忘れずに),誰とどこで待ち合わせて会場に行くかなども決めておきましょう。これだけで,かなり落ち着けるのです。会場では「答えはどれどれだ」などと大声で話す人もいますが,間違っていることも多いので気にしないことです。大学でそれなりに勉強してきていたのですから,あとはいかにして本番で力を発揮するかにかかっています。本番で落ち着けるように勉強面以外の準備も怠らないようにしてください。


最後まであきらめないで

松原大祐(東大卒)

 私の大学の学生は,国試勉強のスタートが非常に遅いことで有名です。12月の初めまでBSTを行ない,そのまま休む間もなく卒業試験に突入し,私の場合は,追試を全部終わらせるのに2月の半ばまでかかりました。
 スタートが遅いとは言っても,それはわかっていることですから,たいていの人は切羽詰まった状況にならぬよう,それなりの準備をしておくものです。が,残念ながら私はアメフト部に所属しており,「アメフトやってるから」というのを言い訳に,勉強もろくにせず,遊びほうけておりました。そのくせ,国試に落ちるわけないだろう,という根拠のない自信だけはありました。
 その自信が打ち砕かれたのは,1月の終わりにあったMEC第2回の模擬試験の結果が返却された時でした。偏差値28,学内順位は83人中,ビリから2番。総合順位では,6500人受けて,ビリから100番で,講評には「最後まであきらめずに学習を続けてください」と書かれており,それだけでもう泣きたくなりましたが,希望を捨てずに,残りの1か月を有効に使うための計画を立てたのでした。

みんながやっていることはすべてやろう

 問題集は買うと高いので,上の先輩から98年度と99年度のアプローチをもらって,なんとか全範囲をそろえることができました。さすがにD問題に関しては,『クエスチョンバンク』の必修対策問題集を買いました。計画を立てたとは言いましたが,やったことは,ただひたすらそれらの問題集を繰り返し解くということだけでした。
 勉強を初めて4週間のうちに,臓器別の所を2回,産婦,小児科を3回ずつアプローチを通ることで,どうにか自信をつけた私は,友人からMECやTECOMの模擬試験問題をかたっぱしから借りて,こなしました。とにかくみんながやっているところは,こっちもやってやろうと思いました。家にこもってやっていたので,他の人はどれだけやっているのかわからず,それがますます自分を不安のどん底へと追い込んでいきました。
 マイナーについては,試験1週間前ぐらいから眼科,耳鼻科,泌尿器科などの過去問をざっとやりはじめましたが,あまり意味はありませんでした。
 試験前日は落ち着かず,何も勉強できませんでした。「試験前日に徹夜するような人間は落ちるのだ」と思ったので,さっさと寝ました。
 試験の自己採点では,D問題以外は8割は確実にとれていました。特にE,F問題は9割近くとれ,驚きました。大事なD問題が38/50でしたが,自分の間違った問題が削除問題になると信じていましたし,落ちたら落ちたでいいさ,という気持ちになっていました。結果的には4月20日に,厚生省で自分の合格を確認しましたが,優秀な友人が何人も落ちており,自分は運がよかっただけだ,というのが正直な感想です。
 国試が終わってみて私が言えることは,以下の通り。
●過去問を2回こなし,間違った所をさらに1回通れば,点数は確保できそうである
●D問題は,みんなと同じ参考書(『クエスチョンバンク』の必修対策など)で勉強するとよい
●模試はできるだけ受け,受けなかった分は,人からコピーしてでもこなすべき
●マイナーはさほど重要ではないと思うが,眼科,耳鼻科,泌尿器は押えるか?
●『禁忌KIDS』(TECOM)を使って禁忌を確認しておくことは必要。点数は高いのに,禁忌肢を踏んで落ちた人を数人知っている
 以上です。これから国試を受ける人は,頑張ってください。