医学界新聞

 

「集中治療と心の問題」をテーマに論議


 3日間の最終プログラムとして位置づけられたシンポジウム「集中治療と心の問題-患者中心の集中治療をめざして」(座長=原千鶴氏,勝屋弘忠氏)は,看護部会の招請講演「Suffering and distress in the ICU」(K. M. Larsson氏)を受けて,医師・看護部門の合同開催として企画された。

患者・家族の不安を軽減するために

 同シンポジウムには,「21世紀を迎えるにあたって,物質的な豊かさから心の豊かさが求められる時代となりつつある。医療,特に救急医療・集中治療の場でも,患者・家族の心をいかに大切にする必要があるかが問われている」(勝屋氏)として,医師・看護職・マスコミから6名の演者が登壇。
 田中耕司氏(九州厚生年金病院心療・精神科)は「ICUにみられる精神症状」を口演。「患者にとってICU入室3日頃が最も重篤な抑うつ症状を示し,身体疾患の改善で精神症状も軽減されるが,退室時にも不安が増大する」と述べ,退室後のメンタルケアの留意点として(1)ICUにおける治療の体験,特にせん妄による幻覚体験は,PTSD(心的外傷性ストレス障害)の原因ともなることがある,(2)退室後,抑うつ不安状態が持続する場合は,精神医学的な治療を必要とする,をあげた。
 また,片岡秋子氏(名大)は「ICUにおける患者の精神面へのケア-モニタリングと看護的ツールの活用」を口演。堀越勝氏は,「米国における集中治療室での心理臨床家の役割」と題し,「アメリカでも精神的ケアがスムーズに行なわれているとは言いきれない」と述べた。
 さらに後藤克幸氏(中部日本放送)は一般市民,メディアの立場から「病院内における患者コミュニケーションと患者の権利」と題し,取材を通しての学びや思いを医療者へ伝えた。明神哲也氏(北里大救命救急センター)は看護士の立場から,「家族勉強会」を開いている現状を「患者の精神的ケア-質の向上のための1方法」の口演で述べた。和田崇文氏(聖マリアンナ医大横浜市西部病院)は,7日間以上入院した75家族へのアンケート結果をもとに,「集中治療室に入院した患者の家族における心の問題と顧客満足」を発表。ICUのシステム改善につながったことを報告した。
 なお,その後に行なわれた閉会式で島田会長は,3日間の参加者が医師約1200名,コメディカルを含む看護職約1400名と報告。数の面からだけでなく,認定看護師の誕生など,今後の活躍が期待される領域でもあり,早期に「ICU看護のめざすもの」を明確にすることも課題と言えよう。