医学界新聞

 

准看護婦養成停止,看護婦養成制度1本化を求めて

日本看護協会が対話型署名運動を展開


 准看護婦の養成制度は,約半世紀前の1951年に,当時の看護婦不足を補う施策として,中学校卒業後2年間の教育で養成できる看護制度として創設された。そして,准看護婦は長年にわたり看護婦とともに医療現場を支えてきた。
 その後,社会環境も教育環境も激しく変動したものの,看護婦養成の現場は,依然2つの看護業務職を持つという,矛盾した教育制度を踏襲してきている。中学校卒業を基礎学歴とした医療専門職は他になくなり,准看護婦養成の教育内容や教育環境が時代にそぐわなくなってきていることは否めない。

責任ある専門家として

 日本看護協会(南裕子会長,会員約48万人)は,「看護サービスを利用する人々に,安心できる看護を提供するために,看護職は責任ある専門家としてさらに高い資質が必要である」との前提に立ち,また看護教育の向上は必須として,「准看護婦養成の停止,看護婦養成制度の1本化」を厚生省の審議会などでも訴えてきた。
 昨(1999)年開催された同協会の通常総会において,「准看護婦養成を停止し,看護婦養成制度の1本化を求める署名運動」が決議され,今年になって国民の理解と支援を要請すべく,全国的に「対話型」の署名運動を開始された。

東京・原宿では役員自ら署名行動

 そのような背景の中,さる1月28日には,東京・渋谷区の同協会原宿会館前で,東京都看護協会と合同で署名行動を実施。本行動には,南会長をはじめとする理事らも参加し,500万人の署名を集めるべく道行く人々へ署名の依頼を行なった。
 老若男女を問わず,気軽に署名をする人たちは「なぜ准看護婦の養成停止が必要なのか」の説明に耳を傾け,中には「私たちのためにもがんばってください」との声も聞こえた。
 なお翌日の1月29日には,神奈川県看護協会が横浜駅西口を含め4か所で署名行動を行なった。また,北海道では32か所のデパート,地下街などで実施するなど,全国11都道府県看護協会が強化週間を設け,署名行動を実施。
 また,同協会では160の関係団体に協力を呼びかけ,「看護婦はライフサポーター」のキャンペーンを行なっている。

看護婦をめざす別ルートとも

 なお,同協会が示した資料によると,准看護婦・士養成課程の卒業者の進路では,1996年には66.1%あった就職率が,97年(64.8%),98年(61.3%)と低下傾向となり,昨年3月では57.6%と6割を割った。一方,卒業と同時に看護婦2年課程に進学する学生は,96年は30.2%であったが,昨年は34.9%と増加している。これらの傾向について日本看護協会は,「准看護婦・士養成課程が,准看護婦を養成する課程よりは,看護婦をめざす別ルートとしての性格を強めつつある」と分析している。
 また,就業者数の比率を見てみると,それまで看護婦を上回っていた准看護婦数は,1995年から逆転しその後減員傾向を続けている。なお,就業している年代では,45歳以上で准看護婦が看護婦の数を上回るが,20-44歳台では看護婦が多数を占め,30代では数の上からは2倍となっている。一方で准看護婦を雇用する病院も減少していることから,今後はますます就業する准看護婦が少なくなると予測される。
 なお,同協会では3月15日まで署名行動を行ない,文部大臣・厚生大臣に提出。准看護婦が看護婦となるための移行教育が速やかに開始されるよう求める。