医学界新聞

 

第34回日本成人病学会 シンポジウム


 第34回日本成人病学会のシンポジウム「不整脈の診方と治療」(司会=新潟大 相澤義房氏,筑波大 山口巌氏)では,6名の演者が臨床の面から見た不整脈診療の最新の知見を報告した。
 まず心房細動に関して,新博次氏(日医大)が総論的に口演。心房細動の持続が,(1)心房有効不応期の短縮,(2)心房興奮頻度の増加,(3)発作性心房細動持続時間の延長,(4)心房細動慢性化,を招くことから「心房細動の早期停止が第一」と主張。発作性心房細動に対する抗不整脈薬の投与には有効性を認めたものの,慢性心房細動に対するジギタリスの使用には疑問を投げかけた。

不整脈診療の現在

 心不全と頻脈性心室不整脈の関係に焦点を当てた杉薫氏(東邦大大橋病院)は,「心不全を伴う頻脈性心室不整脈には,アミオダロンが有効で,不整脈の抑制だけでなく,予後の改善にも効果的」と発表。また,左室駆出率が低い虚血性心不全に頻脈性心室不整脈が伴う場合を例に,「持続性のある頻拍が突然死や心停止を招く恐れがある」と注意を促した。
 続く久賀圭祐氏(筑波大)は,「徐脈性不整脈の診方と治療」と題して,洞不全症候群の患者に対するペースメーカーの適応に関して報告。また,野上昭彦氏(横浜労災病院)は,「上室性不整脈に対する高周波カテーテル・アブレーション」と題する口演で,WPW(ウルフ・パーキンソン・ホワイト)症候群による頻拍や,心房粗動などの上室性頻拍に対するアブレーションの効果を高く評価(1回で治る確率が高い)。さらに「発作性心房細動には抗不整脈薬とカテーテル・アブレーションを併用するハイブリッド療法が有効な場合もある」ことなどを示唆した。カテーテル・アブレーションに関しては,鷲塚隆氏(新潟大)も報告しており,氏は自験例をもとに適応可能な対象とそうでない対象を検討。そして,器質的心疾患を有する心室頻拍例での通電部位の選択指標として,(1)ペースマッピング法,(2)最早期興奮部位,(3)緩徐伝導路の同定,などを解説。マッピングシステムの改良が進んでいることから,予後の改善を考えた治療法の開発に期待を寄せた。
 最後に三田村秀雄氏(慶大)が,「心室性不整脈と薬物治療」を発表。不整脈の治療にあたっては,「まず症状を改善し,それから予後の改善に努めるのがよい」と語り,その上で抗不整脈薬の効果について,「24時間(Holter)心電図において,PVC(心室期外収縮)総数が83%減少したら薬が効いたと判断できる」と報告した。
 総合討論では,ICD(植え込み型除細動器)のみで治療できる例や,生活習慣病との関わりなどの他,不整脈治療におけるQOLについても,(1)発作の症状を軽減する,(2)発作と発作の間の不安を解消する,のどちらを患者が求めるかなどが比較検討された。