医学界新聞

 

第34回日本成人病学会開催される


 さる1月14-15日,東京・千代田区の日本都市センター会館において,第34回日本成人病学会が,戸田剛太郎会長(慈恵医大)のもと開催された(関連記事)。

会長講演

 「肝と免疫」と題する会長講演では,戸田氏が肝疾患治療を免疫学的側面から考察。特にHCV(C型肝炎ウイルス)感染に関し,「肝炎の沈静化にはTH(ヘルパーT細胞)1応答の制御が重要だが,HCV排除にはインターフェロン療法でTH1応答を高めることが欠かせない。リンパ球内のサイトカインの量を測って,TH1とTH2のバランスを見る必要がある」と述べた。続いて癌の免疫療法にも触れ,(1)キメラ抗体,(2)樹状細胞,(3)肝癌細胞と樹状細胞の融合細胞,などを使った方法を紹介した上で,「それらは癌の発生を防ぐだけ。癌の増殖を抑えるためには融合細胞ワクチンとIL(インターロイキン)-12の併用が有効」と,研究の成果を発表。一方で問題点として,自己免疫性疾患の誘発などをあげた。

成人病と遺伝

 シンポジウム「成人病の遺伝的背景と生活習慣」(司会=慈恵医大健康医学センター 池田義雄氏,東大 大内尉義氏)では,まず「肥満」「糖尿病」「高脂血症」「高血圧」に関して,それぞれ吉田俊秀氏(京府医大),三家登喜夫氏(和歌山医大),石橋俊氏(東大),檜垣實男氏(阪大)が登壇。吉田氏はSNPs(一塩基多型)の簡易測定法として,(1)β3アドレナリン受容体遺伝子変異,(2)脱共役たんぱく質1の遺伝子変異,(3)β2アドレナリン受容体遺伝子変異,を測定する方法を発表し,肥満治療への応用を検討。肥満に関しては,続く三家氏や石橋氏も言及しており,「糖尿病」「高脂血症」に対する肥満の遺伝的な関与を認めた。
 また,レニン・アンジオテンシン系の遺伝子に注目した檜垣氏は,アンジオテンシノーゲン遺伝子多型(M235T)などと高血圧の関与を認める一方で,「DNAが人間のすべてを決めるわけではない。加齢を含めた環境因子の影響も大きい」と語った。
 追加発言として山内眞義氏(慈恵医大)と森田啓行氏(東大)が登壇。山内氏は飲酒習慣に関して,健常者の飲酒習慣がALDH2(アセトアルデヒド脱水素酵素)に強く相関していることを示し,アルコール依存症者の飲酒量には遺伝子以外の他因子の影響が大きいことを示唆した。また続く森田氏は,MTHFR(ホモシステイン代謝関連酵素)の遺伝子多型と動脈硬化性疾患の関係を検討し,「MTHFRのV/V型(変異のホモ型)は動脈硬化性疾患になる危険が大きいが,同V/V型は葉酸を加えることによる治療効果も大きい」と報告した。
 最後に司会の大内氏が「今後はどのように遺伝情報を管理していくかが課題」と語り,また閉会式でも戸田会長が,「テーラーメード医療を進めるためにも,環境因子だけでなく遺伝情報が重要」とまとめた。