医学界新聞

 

『ガイトン臨床生理学』翻訳を終えて

田中茂夫氏(責任編集)に聞く


『ガイトン臨床生理学』の特徴

 原書タイトルは“Textbook of Medical Physiology”です。ガイトンには“Textbook of Basic Physiology”という基礎医学的な観点から書かれた書もあるのですが,それに対してこの本は,最初から臨床的な視点で生理学を捉えようというコンセプトで書かれたものなのです。初版が刊行されたのが,1950年代ですから40-50年にわたって版を重ねている名著です。米国にあってもこの手の基礎と臨床の接点となる本格的な教科書は数少ないです。

邦訳版刊行の意義

 実は,この本は過去に,いろいろなグループが翻訳しようとトライされてきたと聞いています。セシルやハリソンの内科学,サビストンの外科学の教科書に匹敵するような名著ですから,ある意味では当然のことです。ところが,どのグループも途中で挫折してしまい,完成しなかった。おそらくその理由は,この本は基礎の知識もあり,また臨床の知識もある人が訳さないとできないというところにあると思います。
 そのような人材を揃えた組織をつくることができるかどうかが,この翻訳を完成させるためには大事だったと思います。当翻訳にはたくさんの訳者のお力をお借りしていますが,基礎と臨床の先生方が手を携えて,バランスよく訳していただいたということが,完成した1つの理由ではないかと考えています。
 読者からは,基礎と臨床の橋渡しという,本書の大きな特徴を評価していただけるとありがたいと思っています。
(談)