医学界新聞

 

第12回日本内視鏡外科学会 ワークショップより


総胆管結石に対する標準術式

 第12回日本内視鏡外科学会のワークショップ1「総胆管結石」(司会=九大 田中雅夫氏,慈恵医大 山本学氏)では,総胆管結石に対する腹腔鏡下手術が標準術式として定着するかどうかが,6名の演者によって模索された。
 まず最初に,長谷川格氏(小樽北生病院)が登壇。円滑な手術と入院期間の短縮をめざして施行した腹腔鏡下手術32例をもとに,「(1)胆道鏡下にバルーンカテーテルを使用,(2)先端フレキシブル型腹腔鏡の利用,(3)気腹法の選択(心肺系に異常がない場合),(4)吸収性クリップを使用した連続一期縫合,などが有効である」と報告した。
 続く久保周氏(NTT西日本松山病院)は,コストを上げずに痛みや侵襲を減らすことをめざした「腹腔鏡下胆嚢摘出術+総胆管切開結石除去+一期的縫合閉鎖」という術式を紹介。痛み・侵襲の減少や入院期間の短縮だけでなく,乳頭括約筋の機能を温存し,すべての胆管結石に対処できるというこの術式について,久保氏は「結石を壊さず,確実で細かい縫合・結紮を実施することで,標準術式になり得る」と語った。
 また,長谷川洋氏(名古屋第二赤十字病院)は,腹腔鏡下手術を総胆管結石に対する一期的治療を第1選択と位置づけ,110例の手術を実施。その結果を,「手術時間が平均227分,入院日数が平均14日を割り,術後のQOLも良好。ほぼ標準術式になり得た」と報告した。さらに,“1回で終了する安全な低侵襲手術”をめざした住永佳久氏(自治医大附属大宮医療センター)は,胆嚢結石を伴い総胆管径が6ミリを超える症例に対して,腹腔鏡下手術が標準術式となり得ることを発表した。

さまざまな症例をもとに考察

 一方,481例の総胆管結石症例を持つ大谷泰雄氏(東海大)は,「腹腔鏡下にENBD(経鼻胆管ドレナージ)挿入下総胆管切開+結石除去+術中胆道鏡+総胆管直接縫合+胆汁漏出試験」という術式を施行した10例の結果を報告。「1例に途中開腹移行を認めたが,平均在院日数8.5日,平均手術時間228分」とその有用性を示し,さらに症例ごとの多彩な術式の使い分けを強調した。
 続く徳村弘実氏(東北労災病院)は,207例の腹腔鏡下手術を開腹手術と比較検討。「腹腔鏡下手術は低侵襲,短期入院,美容面などで利点が大きいが,手技が多種・煩雑で,機器も多様。経験を積み,専門化することで優れた術後成績が得られるだろう」と結論づけた(なお,徳村氏のこの口演はカールストルツ賞を受賞;参照)。
 総合討論では,(1)急性胆管炎に結石があった場合,(2)疑いもしなかった結石が見つかった場合,(3)CチューブとTチューブではどちらが有効か,(4)総胆管を切開する総胆管径の長さ,などを議論。最後に,指定討論者の下村一之氏(埼玉医大総合医療センター)が,「自分にしかできない手技は標準にはなり得ない」と指摘。さらに(1)適応の範囲,(2)退院後のリスクマネジメント,(3)24時間入院,といった問題を提起し,ワークショップを締めくくった。