医学界新聞

 

第14回家庭医療研究会が開催される


 さる11月6-7日,第14回家庭医療研究会が,大滝純司会長(北大)のもと,東京・大手町の三菱総研ビルにおいて約150名の参加者を集めて開催された。
 今年はテーマに「家庭医養成の現状と未来」を据え,会長自らによる基調講演,ワークショップや,口演発表などでも教育の方略について活発な議論がなされた。また今年から学生部会も発足し,この研究会中に第1回総会が開催され,中村明澄氏(東女医大6年)を進行役に,津田司氏(川崎医大),大西弘高氏(佐賀医大)によるレクチャーや,今後の活動などが話し合われた。
 家庭医養成に関して4半世紀先をいくアメリカの家庭医事情について,T.Schwenk氏(ミシガン大)による特別講演が行なわれた。氏は「今の日本の状況は,25年前のアメリカの状況と酷似している。われわれも当初は専門医の理解が得られず苦労したが,現在では家庭医の重要性は認識されている」とし,家庭医としての実績を積むことで周囲の理解が得られることを付け加え,講演を閉じた。

家庭医養成と卒後研修

 大滝会長による基調講演「家庭医養成と卒後研修-特に必修化の影響について」では,まず「日本において家庭医の必要性について十分に検討されてきたとは言えない」状況から,日本は家庭医ではない医師が1次医療の主力をなし,またプライマリケアは誰にでもできるという誤った認識から,医療機関に家庭医専門分野がないなど,諸問題を提示。その一方で,地域で必要とされるプライマリケア医の必要性が明らかになり,「現実的な需要の変化に家庭医養成制度が追いついていない」と指摘した。また最近の動向として,厚生省による「かかりつけ医」の推進や介護保険制度などの変化に加え,教育においてもOSCE導入や卒後研修必修化など,質の高い臨床能力を身につけることがますます重要視されるなどの現状を解説した。
 その上で「家庭医にとって必修化はチャンスでありピンチともなる」と述べ,「各科ローテーションや地域での研修が容易になり,研修の情報が公開されるなどチャンスも増えるが,その一方で,研修の制限が増す,ローテーション先の研修内容の硬直化なども悪い側面も考えられるのでは」と,必修化の功罪を提示した。

何が必要か

 引き続き行なわれたワークショップでは,10人前後のグループに分かれ,大滝氏の講演を土台に,家庭医養成のためには何が必要か,特に卒後初期研修の時期に必要となる教育のプロセスを,できるだけ具体的な方略にしぼってグループごとに検討するというかたちで進められた。最後に行なわれた各グループの代表者における発表では,「なによりもよいロールモデルとなるスタッフの存在が重要」,「まず最初の半年を家庭医療に費やすこと」,「専門科ローテーションしたという事実だけでは,家庭医となるのに必要な知識が得られるわけではない。むしろ,家庭医としてローテーションするのであれば,内科,小児科,皮膚科などの科以外に,小外科的な内容が学べるという点では整形外科を研修するほうが妥当では」,「診療所での外来研修」など,さまざまな意見が提示され,今後の家庭医養成の方向性において共通基盤となる材料が提出された場となった。