医学界新聞

 

ヒトゲノム計画 ヒト22番染色体解読


 日米欧の共同研究により,人間の22番染色体に含まれる遺伝子暗号配列をすべて解読したことが発表された。これは人間の遺伝子情報すべての解読をめざす国際共同プロジェクト「ヒトゲノム計画」の最初の成果である。この研究は,慶大医学部,英国サンガーセンター,米国ワシントン大,オクラホマ大などが分担して進めたものであり,解読の結果は12月2日発行の『nature』誌に発表された。
 さる12月1日,東京・ロンドン・ワシントンDCで同時に,この成果を公表する記者会見が行なわれ,東京では清水信義氏(慶大,写真左),蓑島伸生氏(慶大,写真右)と,オブザーバーとして松原謙一氏(奈良先端技術大)が会見に臨んだ。
 ヒトゲノムを構成する24種の染色体のうち22番は2番目に小さい。DNAは5000万塩基対で,30億塩基対からなる人の遺伝子情報のうち,約60分の1にあたる。今回の研究では,22番染色体の長腕約34メガベースのシーケンシングを行ない,その塩基配列解析から長腕全体の97%に相当する総塩基数3346万塩基を解読した。この塩基配列は完全に連続ではなく,小さなギャップが10個存在する。技術的に現状では解読不可能な部分はあるが,完了と結論された。

遺伝子に個人差

 解読後,817個の遺伝子の存在が推測され,その中で545個の遺伝子と134個の偽遺伝子(遺伝子様の配列を持つが実際には働かない遺伝子)が確認された。この中にはリンパ球白血病など,22の遺伝疾患の原因遺伝子および候補遺伝子が同定された。また決定には至っていないが,精神分裂病に関与する遺伝子も,この塩基配列の中に存在することが明らかになった。
 さらにこの解読によって,DNAの塩基配列は完全に同一ではなく,1000塩基対に1塩基程度の違いがあることも判明。これら固体間の違いは1塩基変異多型(SNP;スニップ)と呼ばれる。この情報は個人差や人種差に加えて,遺伝因子がからむ疾患や薬剤への感受性の問題に迫る鍵となるものである。今後,この研究をもとに,個人差を考慮した治療法の開発や薬剤開発などが可能となることが期待される。
 ヒトゲノム計画は今後,来年夏に全体を集約し,2003年までにすべての染色体を解読する見通し。