医学界新聞

 

はばたけ21世紀の在宅ケア

日本訪問看護振興財団5周年記念講演会開催


 日本訪問看護振興財団(吉原健二理事長)の設立5周年記念講演会が,厚生省,日本看護協会,日本医師会などの後援を得て,さる11月18日に,「はばたけ21世紀の在宅ケア」をテーマに,東京・新宿区の日本青年館で開催された。
 同財団は,日本看護協会が1985年に「訪問看護開発室」を設置し,訪問看護を推進するための事業を開始したことに始まる。1994年6月に開かれた同協会の通常総会において,財団設立の基本財源(5億円)を出資することを会員の総意により承認,設立発起人会を経て,同年12月に訪問看護振興のための公益法人として発足に至った。なお,同財団は翌年2月に機関紙「ほうもん看護」を発行,4月には訪問看護に従事する者の育成事業を開始するなど,この5年間に日本版成人・高齢者用訪問看護ケアプラン使用マニュアルの研究開発,訪問看護に関する調査研究,訪問看護の事業に関する助成,広報活動,出版物の発行・販売,相談事業,国際交流,関係職種間の連携および交流に関する事業,訪問看護ステーションの運営等の事業を展開してきた。

どこの地でも等しい訪問看護を

 吉原理事長は記念式の挨拶で,「全国に訪問看護ステーションは約3800か所となり,17万人が利用するまでになったが,恩恵を受けられない地域はまだある。等しく温かいケアの提供が今後の課題」と述べ,さらなる飛躍をめざしたテーマ「はばたけ21世紀の在宅ケア」のもと,今後の在宅ケアの方向性や担うべき役割を考えたいとして,日野原重明同財団副理事長(聖路加国際病院理事長)による記念講演「人生に有終の美を-在宅ケアに期待されるもの」,およびシンポジウム「はばたけ21世紀の在宅ケア」(司会=東京医歯大 島内節氏)が企画された。また,これまでの歩みを,介護保険スタートに先駆けた5年間と位置づけ,山崎摩耶氏(同財団常務理事,日本看護協会常任理事)がビデオで紹介した。

医療法の改正が急務

 シンポジウム(写真)では,宮武剛氏(埼玉県立大)が「現政治は,何のための介護保険を始めたのかという最大の目的を忘れ,家族介護論を展開しはじめたが,家族が支えられる状況ではないことは明らか。制度の原点を見直すべき」と主張。また,「かつて家庭医は地域の中で大きな力を持っていた。これからは訪問看護婦が政治を動かす力となることを期待したい」と述べた。
 西村周三氏(京大)は,高齢者世帯の動向に注目した経済的費用の予測をたてるとともに,訪問看護効果の適切な測定例がなく,調査研究の標準化が必要と訴えた。福屋靖子氏(筑波大)は,「人間性回復の在宅ケアをめざして」をテーマに登壇。川村佐和子氏(都立保健科学大)は,「法の上では医・歯・薬に並列して看護があることを自覚し,訪問看護婦は在宅医療の96.6%を担う実態から,看護職も医療行為ができることをうたった医療法の改正が急がれる」との考えを示した。