医学界新聞

 

あけぼの会乳がん月間記念講演会が開かれる


 乳がん患者の全国組織「あけぼの会」(会長=ワット隆子氏)の「乳がん月間記念講演会」が,さる10月17日,東京・有楽町マリオンの朝日ホールにおいて開催された。同会は「乳がんの手術をした者が集まって話し合う場を持つことは,単に体験者同士の救いになるだけでなく,一歩進んで自分たちの体験を生かし,がんではないかと気にやんでいる人,実際に手術を受けて入院している人,手術後,ショックから立ち直ろうとしている人たちすべての助けになろうと努めるのであれば,大変意義のある集まりのなると信ずる」というワット会長の新聞への一通の投稿が契機となって1978年に誕生。当初17人で活動を開始したが,その後,(1)機関誌「曙」やニュースレターの発行,(2)母の日と乳がん月間(10月)における乳がん検診の促進や早期発見のキャンペーン,(3)講演会・支部集会の開催,(4)全国会員の名簿作成,(5)会員間の親睦旅行,(6)ABCSS(Akebono Breast Cancer Support Service)病院訪問ボランティアなど,精力的かつユニークな活動を続け,現在3500人を超える会員を擁するに至っている。


基調講演とシンポジウム

 乳がん月間の10月には東京の他にも新潟市(2日),福岡市(10日),草津市(24日),静岡市(30日)などで記念講演会を開催。東京で開かれた記念講演会ではワット会長の挨拶と支部長紹介に続く基調講演「個別化をめざした乳がん治療と臨床試験」で,渡辺亨氏(国立がんセンター中央病院内科医長)が内科腫瘍専門医の立場から乳がん治療の現状,および,現在進行中である「臨床試験」の概況とその問題点を平易に解説した。
 また同会の名誉会員である永六輔氏(作家)の講演「がん患者に喝つ!」に続いて開かれたシンポジウム「成功させよう“乳がん検診ウィーク”」では,シンポジストとして招かれた遠藤登喜子氏(国立名古屋病院放射線科医長),森本忠興氏(徳島大医療技術短大教授),野水整氏(星総合病院外科部長),二瓶光博氏(いがらしクリニック副院長),福田護氏(聖マリアンナ医大乳腺内分泌外科部長),田島知郎氏(東海大教授)ら同会の顧問医が,それぞれの立場から医学の最前線の知見を披露。
 最後に企画された「夫は語る-乳がんの妻を持つ夫の闘い」では,「あけぼの会:夫の会」の2氏が自らの体験談を発表し,永氏の作詞になる「見上げてごらん 夜の星を」を全員で合唱して盛会裡に閉会した。
 また,同日会場で配付された機関誌には「『曙』20号発刊に寄せて」と題して25名の顧問医(看護婦を含む)が,下記のような心暖まる励ましの一文を寄稿している。
 なお同会では「普通会員」および「賛助会員」を募集している。前掲書も含めて詳細は下記まで。
・問合せ先:〒153-0043 東京都目黒区東山1-27-1 あけぼの会事務局
 TEL(03)3792-1204/FAX(03)3792-1533
 http://www.angel.ne.jp/~akebono/


『曙』20号発刊に寄せて

(1)乳がんの個性に応じた治療を(癌研・坂本吾偉氏)
(2)女性の無知を憂う(癌研・霞富士雄氏)
(3)「オーダーメイド」の医療を(大阪府立成人病センター・小山博記氏)
(4)EBMとは何でしょう(田島知郎氏)
(5)納得して病気に向き合っていける治療を(群馬大・飯野佑一氏)
(6)形成外科医の独り言(東邦大・岩平佳子氏)
(7)開院します(かねこ乳腺クリニック・金子洋一氏)
(8)骨転移対策への期待(兵庫県立成人病センター・河野範男氏)
(9)治療法の個性化の到来を希望して(神戸市立中央病院・小西豊氏)
(10)感動あふれる人生にしてほしい(川崎医大・園尾博司氏)
(11)専門医療の変化に追われる医療現場(聖路加国際病院・玉橋容子氏)
(12)乳房温存療法-特にがんの広がりについて(飯田市立病院・千賀脩氏)
(13)先人のアイディアを日本に(聖路加国際病院・中村清吾氏)
(14)患者参加型の医療機関を(ナグモクリニック・南雲吉則氏)
(15)やっぱり大切,自己検診(コスモス女性クリニック・野末悦子氏)
(16)乳腺外科のこれから(杏林大・福島久喜氏)
(17)孤独な戦いをしないで(福田護氏)
(18)乳がん死をゼロにするために(信州大・藤森実氏)
(19)根治性,機能性,美容性を考慮に入れて(今井病院・星野男氏)
(20)チャレンジ精神,そして優しさと思いやり(都立豊島病院・向山雄人氏)
(21)乳がん検診にマンモグラフィー導入の推進を(森本忠興氏)
(22)セカンドオピニオンの普及を(北九州市立医療センター・光山昌珠氏)
(23)最高の治療効果を得るために(阪市大・森本健氏)
(24)乳房再建:がんは残さずに取って-再建はその後のこと(聖マリアンナ医大・酒井成身氏)
(25)乳がんの遺伝(野水整氏)