医学界新聞

 

第5回白壁賞,第24回村上記念『胃と腸』賞贈呈式開催


 「第5回白壁賞」が幕内博康氏(東海大)他による「m3・sm1食道癌に対するEMRの可能性」(『胃と腸』〔医学書院刊〕第33巻7号掲載)に,また「第24回村上記念『胃と腸』賞」が勝又伴栄氏(北里大東病院)他による「潰瘍性大腸炎にみられる敷石様所見の臨床病理学的検討」(同第33巻9号掲載)に決定。その贈呈式がDDW-Japan1999開催前日の10月27日,広島市の広島厚生年金会館大ホールで開かれた第39回「胃と腸」大会の席上で行なわれた。

m3・sm1食道癌に対するEMRの可能性

 「白壁賞」は,故白壁彦夫氏の偉業を讃えて設けられた賞で,氏の業績を鑑みて,消化管形態・診断学の進歩・普及に寄与した優れた研究を対象とし,その選定対象を「『胃と腸』誌に掲載された論文に限らず,『胃と腸』編集委員の推薦があった論文も対象とする」としている。
 贈呈式では,選考委員を代表して下田忠和氏(国立がんセンター中央病院臨床検査部)が選考経過を次のように説明。
 「本論文は多数の症例を用いて,m3・sm1食道癌に対するEMR(内視鏡的粘膜切除術)の可能性を徹底的に追求した。術前にsmに深く入っている可能性を診断できる0-IIc+IIa型,0-III 型や0-I 型を除外した上で,あるいは大きさの大きいものは手技的な問題から除外した上で,その他のm3・sm1症例を検討。リンパ管侵襲および低分化成分がなく,さらに癌の浸潤が圧排性を増殖しているものは,ほぼ100%リンパ節転移がなく,m3・sm1食道癌の中で49.5%が相当すると報告している。最近,臨床診断で十分に深達度診断が行なわれるようになってきたことを踏まえて,m3・sm1でEMRが可能であるものが多く,侵襲の少ない治療法として期待できることを示したことが評価された」
 続いて,早期胃癌研究会代表の八尾恒良氏(福岡大筑紫病院)が,賞状と楯を授与。中村秀穂医学書院常務から副賞の賞金が贈られた。
 受賞者を代表して挨拶に立った幕内氏は,「かねてより敬愛していた,白壁彦夫先生のお名前を拝する栄誉ある賞をいただいて大変感激している。今回の仕事はわれわれだけでなく,われわれのグループの先輩,同輩あるいは後輩の先生方の努力の結晶である。実は,いつかは食道領域で白壁賞をいただきたいと思っていたが,今回,思いもかけず早く受賞することができたのは,文字どおり望外の喜びであり,ここ数年来で最もうれしいことの1つである」と謝辞を述べた。

潰瘍性大腸炎にみられる敷石様所見の臨床病理学的検討

 引き続いて会場では,「第24回村上記念『胃と腸』賞」の贈呈式が行なわれた。
 本賞は,『胃と腸』誌創刊時の「早期胃癌研究会」の代表者である村上忠重氏を顕彰して設けられた賞で,消化器,特に消化管疾患の病態解明に寄与した同誌の年間最優秀論文に対して贈られる。
 贈呈式では,選考委員を代表して下田氏が,「本論文は,潰瘍性大腸炎において敷石様所見を呈するものが約11%認められ,左側大腸に高頻度,しかもその多くは軽症例ではなく重症例において見られるが,なぜそういうものが起こってくるかという病理学的な解析を加えた。潰瘍性大腸炎において敷石様所見を呈するものは頻度は少ないが,臨床的にこのようなものを知っておいて,Crohn病やその他の炎症性腸疾患と十分な鑑別をしなければならないという論点が評価された」と選考経過を報告した。
 続いて,八尾恒良氏が賞状と楯を授与。中村秀穂医学書院常務から副賞の賞金が贈られた。
 また,受賞者を代表して挨拶に立った勝又氏は,「まさに“青天の霹靂”と言うべきで,まったく予想もしていなかったこの賞をいただくことになり,最初は信じられなかった」と謝辞を述べ,「日頃から形態学に携わっていて気をつけていることは,画像診断が臨床的にどのような意義があるかということはもちろんであるが,肉眼的な変化が必ず病理組織学的な変化に対応するだろうという信念のもとに画像や肉眼所見を見るようにしている。これは,いわば『胃と腸』誌の創刊当初からの手法を学ばせていただいているわけであって,今後もこの方法を続けていきたいと思う。また,もう1つ日頃から考えていることは,形態学も非常に複雑に見えることが多々あるけれども,発生から成長の過程でいろいろ変化しても,その成り立ちのようなもの,いわゆる本質的なものはそれほど多くはないだろうという考えのもとに,できるだけシンプルな分類と,その形態のストレートな表現法を常に意識している」と,改めて自身の研究への視座を語った。