医学界新聞

 

リハビリテーション・ケア研究大会'99開催


 さる10月7-8日の両日,リハビリテーション・ケア研究大会'99(第21回全国地域リハビリテーション(以下リハ)研究会,第3回全国リハ医療研究大会の合同大会)が,藤田久夫大会長(兵庫県立総合リハセンター病院長)のもと,神戸市の神戸国際展示場で開催された。「介護保険導入を目前に控えて21世紀に向けてのリハ・ケアのあり方を探る」をメインテーマに据えた本大会には,医師,理学療法士(PT),作業療法士(OT),看護婦,保健婦,ケアマネジャーなど医療・保健・福祉の関係者の他,自治体の職員,学生,車椅子の障害者や家族,ボランティアなど約1,300人が参加した。

21世紀に向けた医療・保健・福祉とは

 大会では,271演題のポスター発表をはじめ,特別講演(3題),基調講演,シンポジウム(3題)などが企画された。
 そのうち,特別講演 I「これからの社会福祉の方向」では樋口正昇氏(厚生省保健医療局国立病院部運営企画課長)が,戦後から続いてきた社会福祉の枠組みを大転換する今回の医療法第4次改正について報告。その考え方と改正点を,(1)利用者本位のサービスへの転換(措置制度から利用選択制度への転換),(2)サービスの質の向上(ニーズに合ったサービスの提供),(3)地域ケアシステムづくり(サービスを確保するためのシステムづくり)から解説した。
 特別講演 II「病院・施設におけるリハと地域ケア」では山口昇氏(公立みつぎ総合病院管理者)が,地域包括ケアシステムを構築している先進的な地域である広島県御調町についての紹介と,同病院と保健福祉センターを核としたと地域ケアシステムの総括的な活動を報告。保健・医療・福祉の連携に加えて,生活を視野に入れたネットワークづくりの重要性を強調した。
 特別講演 III「これからの病院-リハ施設の質を考える」では岩崎榮氏(日医大常任理事)が,「これからは医療評価の時代である」という認識のもと,今後の方向性としてEBM(Evidence-Based Medicine)による学問的な裏づけの確立と医療の標準化が必要と指摘。その上で,医療の質を評価するアプローチとして,(1)構造=structure(投入される資源,ヒト・モノ・カネと組織),(2)過程=process(医療提供の実際の状況),(3)結果=outcome(医療後の患者の状態・健康回復度のチェック)の3つの側面から具体的な分析と検討を加えた。また,日本リハ病院協会の医療機能評価委員会が現在開発中の「医療評価指標」を紹介しながら,医療の質と医療人の評価という難題に戦略的に取り組んでいくべきことを強調した。

介護保険時代のリハ病院のあり方

 シンポジウム I「施設におけるリハ・ケアのあり方」(座長:熊本機能病院長 米満弘之氏)では,特別養護老人ホーム,療養型病床群,老人保健施設,重度身体障害者更正養護施設,診療所という立場の異なる施設におけるリハ・ケアの現状が,それぞれの施設でのPT・OTの活動を中心に紹介され。また,質疑応答ではPT・OTの役割から機能・専門性,さらには教育のあり方などまで広範な話題が論議された。
 中でも,医療(病院)と福祉施設(特別養護老人ホームなど)におけるリハの違いについて,「PT,OTの教育にもっと生活リハ・地域リハのカリキュラムを取り入れるべき」との意見から,病院での急性期リハから地域・在宅での慢性期リハへの連携をどのようにシステム化するかが問われる論調となった。
 シンポジウム II「リハ病院の将来像」(座長:近森会常務理事 石川誠氏,神戸リハ病院長 吉川正氏)では,民間および公的リハ病院,総合リハセンター,老人,急性期リハ病院というそれぞれ異なる立場から5人のシンポジストが現状紹介と将来について発言をした。その後,二木立氏(日本福祉大)が「介護保険と医療法改正・診療報酬制度改革とリハ病院の将来像」について総括的な報告をした。また氏は,「これからのリハ病院は,保健・医療・福祉の連携強化によるネットワークの形成や複合体化が進み,いわゆるケアミックス化が進行するだろう」との予測を述べた。
 次回は,明年10月6-7日の両日,盛岡市の盛岡市民文化ホールで開催される。