医学界新聞

 

「更年期医療への学際的アプローチ」をテーマに

第14回日本更年期医学会が開催される


 第14回日本更年期医学会が,第9回国際閉経学会(10月17-21日,会長=東医歯大教授 麻生武志氏)の開催に先立ち,さる10月17日に,横浜市パシフィコ横浜で開催された。なお,今学会では看護界から前原澄子氏(三重県立看護大学長)が会長を務め,「更年期医療への学際的アプローチ」をメインテーマに掲げた。
 更年期女性の健康問題は,医学の範疇である疾病,症状として扱われてきたが,QOLをめざした医療のあり方が問われる昨今,更年期女性の健康問題は,医学からのアプローチのみではニーズに十分に応えられないとして,多くのコメディカルの職種が関与するようになってきた。このような背景を受けて,日本においても先進諸国に遅れをとらないケアシステムの構築が必要との視点から,本学会ではメインテーマにそったさまざまなプログラムが企画された。


 外国人演者による基調講演は,日本に9年間の滞在経験があるMargaret Lock氏(McGill大)による「MENOPAUSE:Lesson from Anthropology」および,Nancy F. Woods氏(ワシントン大)による「Women's Strategies for Being Health during Midlife and Beyond:A View from the U.S.」の2題。また,シンポジウムは I「メノポーズ・そのパラダイムの転換」(座長=京府医大 本庄英雄氏,長野県看護大 吉沢豊予子氏),II「メディカル・コメディカルの更年期へのアプローチとその役割」(座長=三重県立看護大 川野雅資氏,国立栄養研 杉山みち子氏)が,さらにワークショップも I「HRT(ホルモン補充療法)は日本に根づくか?」(座長=聖マリアンナ医大 石塚文平氏),II「中高年女性のトータルケア」(座長=聖路加国際病院 伊藤博之氏)の2題が行なわれ,さらに学会賞受賞講演では小山嵩夫氏(小山嵩夫クリニック)が「日本更年期医学会の歩みとこれからの更年期外来」を口演した。

更年期の女性は「新人類」

 基調講演「閉経:文化人類学からのレッスン」を口演したM. Lock氏は,「閉経と更年期は一緒ではない」と前置きし,閉経は単に生理が終わることを意味し,更年期は別な概念であることを強調。「閉経後も生きている動物は人間だけであり,閉経後(45歳以降)の生活を視野に入れたライフスタイルの再設計も必要」なことを示唆した。また,若い女性の栄養不良による無月経等を憂慮し,骨形成が閉経後の生活やHRT療法にも大きく影響することを指摘した。さらに,日本(長野=農村部,京都=工場群,神戸=郊外専業主婦)と,アメリカ,カナダでの45-55歳の女性を対象とした調査研究を報告。その比較によるとホットフラッシュ(顔のほてり等)の発現率は,日本が12.3%,アメリカ31.0%,カナダ34.8%という結果であり,うつ病,寝汗ともに,日本人の訴えの頻度は低かったことを明らかにした。一方で,中国人の調査では156名と数が少ないながら,高頻度に訴えがあったことを報告し,文化的背景による差異があることを指摘した。
 その上で,更年期の女性を守るための課題として,コントロール比較研究,閉経と加齢の関係を明らかにすること,加えて医学・生理学・倫理的視点からの閉経研究が,今後重要になると示唆するとともに,保健人類学や社会文化人類学を踏まえた「新人類」としての視点が必要と述べた。
 また,N. Woods氏は「中高年以降の女性が健康であるための方策-アメリカからの意見」と題する基調講演を行なった。氏は,「閉経を迎えたの女性は,それ以降が新しい生活の始まり,と考える人もいる。しかしながら,何が始まるのかがわかっていない分野でもあり,情報を最もほしがっている分野である」と指摘した。また,閉経に伴いカウンセリングを受けた人たちの調査からは,「HRT療法でのチーム連携や継続のための介入が重要であることがわかった。また,閉経前後の生活をどう設計するか課題となろう」と述べ,ライフスタイルの変化を楽しむのも1つの方策であることを示唆した。