医学界新聞

 

「医療政策の新しい枠組み」をテーマに

第37回日本病院管理学会が開催される


 さる10月14-15日の両日,第37回日本病院管理学会が,池上直己会長(慶大教授)のもと,「医療政策の新しい枠組み」をメインテーマに,千葉県浦安市のサンルートプラザ東京で開催された。
 今学会では一般演題発表の他に,特別講演としてエール大のDRG開発チームの1人であり,韓国厚生省DRG委員会委員長を務めたYoungsoo Shin氏(ソウル大教授)による「Korea's Experience in Introducing a DRG Based Payment System」,および特別講演を踏まえたシンポジウム「診療報酬体系の改革に向けて」(司会=日本福祉大教授 川渕孝一氏)が企画された。

診療報酬と価格政策

 今学会でのシンポジウムでは,「現行の医療体系は政策誘導プライスであり,医療機関,医師が報われる仕組みになっていない」(川渕氏)として,診療報酬の新しい枠組みはどうあるべきかなど,行政,医療経済学など5つの視点から論じられた。
 最初に高原亮治氏(現防衛庁衛生参事官)が,前任先であった厚生省行政官の立場から発言。「診療報酬はこれまで50年続けてきた支払い方式から,1転帰払いであるDRG方式に切り換えるべき」との考えを示し,導入に際しては経済的分析,経営学的分析が必要になることを示唆した。
 安川文朗氏(広島国際大助教授)は,医療経済学者の立場から意見発表。「医療は規制産業の1つであり,医療価格は診療報酬と位置づけている」と述べ,「医療者と患者の間の情報量格差によって患者が適正な医療を受ける機会を損なう可能性がある」という情報の非対称性(偏在)を指摘,さらに所得分配の不公平性に関しては,「公的に消費者の医療サービス享受機会の平等化を図る必要がある」と述べた。また,今後の医療価格政策の方向については,医療の標準化,保険における公私のコストシフティング,他の関連サービス(特に介護保険)との関係がどうなるかについて考察した。
 亀田俊忠氏(亀田総合病院理事長)は,医療提供者(病院経営者),保険者,消費者を兼ねる立場で発言。「自己負担をどのように設定できるかを考える時期」と指摘するとともに,「望ましい医療制度を構築していくためには,医療,介護,年金などを含めた社会保障全体のマスタープランを描く必要がある。そのためには供給体制,財源,支払い方式などについての具体的な設計が欠かせない」と述べた。
 池田俊也氏(慶大)は,医療管理学の立場から,「現行の診療報酬体系は原価から乖離したもの」と発言。「疾患別に原価を算定する手法の研究とデータの分析が必要」とした上で,欧米のDRG/PPSなどの包括支払い体系を概説した。また新しい診療報酬体系の構築に向けて,「包括支払い方式の導入は,クリティカルパスが有効となる急性期入院医療や日帰り手術など,診療行為の定型化が比較的容易な疾患別に限って導入すべき」と提言した。
 看護研究者の立場からは阿部俊子氏(東医歯大)が登壇。(1)患者の重症度,(2)投入コストとしての原価,(3)治療効果の3点が診療報酬体系を考える上で重要なポイントと示し,退院指導の重要性を強調。「在院日数の短縮化や介護保険は,定額制とは別の診療報酬対象とすべき」と発言した。
 総合討論の場では,特に医療サービス(診療報酬)の標準化と原価に関して論議された。なお,次回は明年,河口豊会長(広島国際大)のもと,広島市で開催される。