医学界新聞

 

1999年度ノーベル平和賞


 ノルウェーのノーベル賞委員会は,10月15日,1999年度のノーベル平和賞は国際民間医療援助団体「国境なき医師団(MSF;Medecins Sans Frontieres-Doctors Without Borders,以下MSF)」に授与すると発表。授賞理由として,「この非政府組織(NGO)の国境や政治情勢に影響されることのない先駆的人道援助活動」を挙げている。
 1971年にフランスの2つの医師グループによって設立されたMSFは,1972年にニカラグアの地震に対して最初の行動を起こした。その後「人種,宗教,思想などの違いを超えた,中立公平な立場に立つこと」を基本理念として,レバノン,タイ(1976),アフガニスタン(1979),エチオピア(1984),アルメニア,ルーマニア,カンボジア(1989),イラン(1991),ソマリア,旧ユーゴスラビア(1992),ルワンダ(1993),また最近では日本(神戸),コソボ,東ティモールなどで活動を展開している。
 1993年には,「難民の苦境に世界の目を向けさせ,国際的支援を拡大させた功績」に対して,国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)からナンセン賞が贈られた。
 MSFは現在,世界に6つの支部(フランス,ベルギー,スイス,オランダ,ルクセンブルグ,スペイン)と,12の事務局(ギリシャ,イタリア,イギリス,デンマーク,ドイツ,スウェーデン,カナダ,アメリカ,日本,香港,アラブ首長国連邦,オーストラリア)を置いている。

 その主な活動分野は次の通りである。
(1)自然災害-地震・台風・洪水・火山噴火など〔(1)医療活動,(2)保健事業,(3)物資援助〕
(2)武力紛争-独立運動,市民戦争,民族紛争など〔(1)医療援助,(2)食料援助,(3)教育,(4)証言・告発〕
(3)難民キャンプ〔(1)食料配給,(2)医療援助,(3)保健衛生,(4)衛生員の育成,(5)証言・告発〕
(4)長期援助・技術援助〔(1)病院の再建,(2)ワクチン接種(伝染病予防),(3)伝染病対策〕
(5)フランス国内連帯事業-失業者や不法滞在者などに対する救済事業〔(1)医療援助(救急看護や応急処置),(2)ケースワーカー活動,(3)公的機関への呼びかけ,(4)救急センターの設置〕
 (『国境なき医師団は見た』〔日本経済新聞社刊〕より)