医学界新聞

 

第27回日本臨床免疫学会開催


 第27回日本臨床免疫学会が,10月6-8日の3日間,狩野庄吾氏(自治医大教授)のもと,栃木県・宇都宮市の栃木県立総合文化センターにおいて開催された。
 狩野会長は本学会を「基礎免疫学の研究室と臨床の現場との対話を行なう絶好の機会」と位置づけ,特別講演には,基礎免疫学の立場から谷口克氏(千葉大)の「NKT細胞の分化と機能」と笹月健彦氏(九大)の「免疫学の進歩と臨床-21世紀への展望」の2題を企画。さらに海外から2名の招待講演,またシンポジウム5題,第一線の研究者による教育講演7題,一般演題などが行なわれ,多くの参加者を集めた。
 本号では,シンポジウム1「膠原病の難治性病態と新しい治療法」をレポートする。


膠原病の難治性病態と新しい治療戦略

 初日に行なわれたシンポジウム1(司会=阪大 吉崎和幸氏,東女医大 原まさ子氏)では,最近明らかにされた膠原病の病態をターゲットとする新しい治療法が議論された。
 最初に上阪等氏(東医歯大)は,「老化遺伝子p16INK4a誘導による滑膜炎の治療」と題して,慢性関節リウマチ(RA)の主たる病因の1つである滑膜細胞に細胞増殖抑制遺伝子を誘導する遺伝子治療を概説。氏は,サイクリン依存性キナーゼ(CDK)のうち老化状態の細胞に発現するp16INK4a遺伝子を,アデノウイルスを用いてRA滑膜細胞に導入した結果,「RA滑膜細胞の増殖抑制の効果が得られた」と報告した。さらにそれ以外にも,炎症性サイトカインの産生,骨・軟骨破壊などにも効果があることを明らかにした。
 続いて,RAに対する新しい治療戦略として小林哲也氏(聖マリアンナ医大)は,Fas依存性アポトーシス関連遺伝子(FADD)を用いたRA遺伝子治療の可能性を検討した。FADD遺伝子をRA培養滑膜細胞に導入したところ,アポトーシス誘導に成功。さらにRA滑膜組織を移植したSCIDマウスにFADDアデノウイルスを局所注入した結果,多くの細胞の消失をみたが,軟骨細胞に対してはアポトーシス誘導がみられない結果を得たことを報告し,「この方法はRAの次世代の治療法となりうる」と指摘した。

SLEへの新しい治療法

 一方,SLE(全身性エリテマトーデス)への治療に関しては,2人の演者が口演。竹内勤氏(埼玉医大)は,SLEのT細胞シグナル伝達異常に着目。SLEの病態において,TCRゼータ鎖の発現低下が見られ,同時にFN-γの過剰生産が認められたことから,「TCRゼータ鎖の発現を正常に戻すことができれば,SLEのコントロールも可能になる」と報告した。
 次いで田中良哉氏(産業医大)は,疾患活動性が高いSLE患者,またはステロイドを長期使用し抵抗性を示すものの減量が困難なSLE患者を対象に,シクロスポリン(CyA)投与を行なった結果を報告。CyAは,多剤抵抗性遺伝子MDR-1の産物でステロイドを細胞外に能動輸送するP-糖蛋白質(P-gp)と拮抗して薬剤耐性を改善するとされているが,氏らは長,期ステロイド投与患者の末梢リンパ球から,P-gpとMDR-1遺伝子転写調節因子「YB-1」の発現が増加することが認められたとし,「疾患活動性の高いSLE患者のみならず,ステロイド抵抗性を呈する患者にもCyA使用を考慮すべき」と述べた。
 最後に針谷正祥氏(東女医大)は,多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)においてステロイド抵抗性で間質性肺炎(IP)を引き起こす症例に対象に,全国36施設にアンケート調査を施行。この結果から,PM/DMに伴う急性型IPにおけるCyA投与の有効性を明らかにした。また自験例からその適応を検討し,最後に「CyA使用はPM/DMにおける急性型IP治療の選択の1つであり,適応によって治療初期からステロイド剤と併用すべき」とした。