医学界新聞

 

要援護高齢者対策の「行政観察結果に基づく勧告」に
日本看護協会が見解を発表


 日本看護協会は,総務庁がさる9月24日に公表した「要援護高齢者対策に関する行政観察結果に基づく勧告」について,(1)ホームヘルパーの医療行為に反対。訪問看護の提供体制の整備が優先,(2)介護保険施設における看護婦等の非常勤枠の拡大に反対,を主旨とする見解を発表。その意見書の概略を以下に紹介する。


【「要援護高齢者対策に関する行政観察結果に基づく勧告」に対する意見】

(社)日本看護協会長 南裕子  

 1999年9月24日に「要援護高齢者対策に関する行政観察結果に基づく勧告」(以下,勧告)が公表された。
 勧告の中には,要援護高齢者に対するケアの質の低下を招きかねない内容が見受けられる。コストを意識した施策は重要であるが,必要以上にコストを優先することは,利用者本位の行政施策推進としては不適当であると考える。
 本会は,国民にとってのケアの質を守る立場から,下記の2点について意見を述べる。本会の意見が今後の施策推進に反映されることを望む。

―記―

1.ホームヘルパーの業務を見直し医療行為へ業務拡大することは,ケアの質の低下を招き,要援護高齢者に不利益をもたらすので反対である。むしろ訪問看護にかかわる諸要件を緩和し,提供体制を整えることが優先課題であると考える。
●現在の在宅医療の体制では,看護職員でさえ医師の指示がなければ医療行為を行なってはならないとされている
●すべての医療処置は,医学・看護学上の知識に基づいて行なわれ,利用者の状態に応じ看護学上の判断がなされている。医療行為を行なうには国家資格である看護婦(士)資格が必要
●訪問看護に関する人員基準や指示に関することや訪問回数等の規制を緩和すること。診療報酬などで,在宅医療の提供体制を整備することこそが国民にとってのケアの質を守るための優先課題である
2.介護保険施設における看護婦等直接処遇職員の常勤職員枠を非常勤職員枠に置き換えることは,ケアの質の低下を招き,入所者に不利益をもたらすので反対である。むしろ常勤職員の人員配置基準を高めることが必要であると考える。
●継続的なチームケアの質の向上を妨げかねない非常勤職員枠の拡大よりも,職員配置数を増やすことこそが必要
・問合せ:(社)日本看護協会協会政策企画室
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