医学界新聞

 

リハ専門看護師の活動が話題に

国際リハビリテーション看護研究会第1回研修会開催

野々村典子(茨城県立医療大・看護学科長)


 国際リハビリテーション看護研究会主催による第1回研修会が,さる8月28日,東京・新宿区の日本出版クラブにおいて開催された。同研修会では,特に他国における専門看護師のあり方について高い関心が寄せられた。同研究会代表者を務める野々村典子氏(茨城県立医療大看護学科長)に報告していただいた。


転換期を迎えた今,求められるリハ看護の専門技術開発

 日本におけるリハビリテーション(以下,リハ)を取り巻く現況は,社会の急速な高齢化に伴い,介護保険の導入に代表される社会保障システムの見直しが進められるなど,大きな転換期を迎えている。このような社会の変化は,リハ領域における看護の重要性を増していると考える。国際リハ看護研究会発足の意図は,わが国のリハ看護の領域をより明確にする1つの方向として,諸外国のリハ看護の実態を把握し,その国民性,文化的相違を踏まえて比較することにより,日本におけるリハ看護の専門性を確立するための教育的,組織・制度的検討を行なうことにある。
 今回は,オーストラリアから招聘したリハ専門看護師(以下,リハCNS)に活動の実際を中心に講演いただき,一方,日本からは「リハ看護の専門性確立のための援助分析研究(平成10年度厚生科学研究費補助金医療技術評価総合研究)」の成果を報告。また,両国が実際のケース(キーワード:脳卒中,片麻痺,高齢者,発症から在宅まで)を提示し,看護援助の2国間の比較検討を行なった。出席者は,リハ看護の実践者,研究者,教育者である。議論の中心は,リハCNSに関することであった。特に臨床からの出席者はリハ看護の専門的援助技術に関心が高く,出席者へのアンケートからも本会への期待がうかがわれた。

豪州のリハCNS

 講師を務めたアンソニー・ブラック氏はメルボルンにあるキングストンセンターのリハ病棟の看護ユニットマネジャーである。氏はオーストラリアにおけるリハ看護の専門性について,高齢者ケアの動向から論じた。オーストラリアも65歳以上の平均余命が1960年代の10-12年(75-77歳)から,2000年代には16-19年(81-84歳)に延びると言われている。高齢者へのヘルスケアは,自立性の維持をサポートするためにリハの重要性が強調されている。
 リハCNSの専門分野には,小児リハ(熱傷,トラウマ等),急性期リハ(脊髄損傷,交通事故等),老年リハ(神経科,整形外科,長期ケア等)がある。オーストラリア看護連合(Australian Nursing Federation)がリハCNSの基準を持ち,その認可は,委託を受けた施設が行なっている。中でもキングストンセンターは,1995年にオーストラリアで最初に高齢者リハCNSの認定を行ない,リハCNSの役割の開発,発展に大きく寄与している。
 キングストンセンターの入院ケース(70歳女性,右大脳梗塞)によると,急性期病院で6日間を過ごし,リハ病棟に入院してきている。多職種専門家により入院時アセスメントがあり,入院後1週間前後でチームによるゴール設定が行なわれる。2週間前後には再度治療計画が検討され,このようなケースの平均入院日数は33日であることが報告された。この間のリハCNSの実践者としての役割は,複雑な状況でのクリニカル・エキスパートであり,入院の適否について評価しサービスを提供することである。また,退院計画の作成,生活様式の変化に合うように患者と家族の関係を調整している。この他にリハCNSには教育者としての役割,コンサルタントとしての役割,研究者としての役割がある。
 今後は,リハ看護先進国や近隣の国々との交流を深め,このようなリハ看護の研修会を企画していきたい。
・連絡先:〒300-0394 茨城県稲敷郡阿見町阿見4669-2 茨城県立医療大学 野々村研究室
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