医学界新聞

 

チーム医療と糖尿病療養指導士が話題に

第4回日本糖尿病教育・看護学会開催


充実した企画と一般演題発表

 第4回日本糖尿病教育・看護学会が,さる9月24-25日の両日,兼松百合子会長(岩手県立大)のもと,岩手県の岩手県立大学で開催された。同学会は,これまで東京や横浜で開催されてきたが,今回が初の地方開催。「糖尿病教育・看護の充実,そして結果」をメインテーマに据え,800名を超える参加者のもと,昨年の約2倍近い99題の一般演題発表などが行なわれた。
 また今学会では,小児糖尿病患者のストレス行動調査を基に,「親の生活行動が子に多大な影響を与える」などと述べた会長講演「糖尿病患者の療養生活の実態把握から看護の充実へ-小児糖尿病の場合を中心に」をはじめ,海外からの招聘による特別講演「進歩する糖尿病看護・教育」(英・ウォーリック大 メアリー・マッキノン氏)では,IDF DECS(国際糖尿病連合糖尿病教育相談部門)国際合意基準に示される「糖尿病教育のための実践基準」や,RN(登録看護婦)が主となって活躍している糖尿病教育者の役割などが紹介された。なお,日本からの特別講演の演者には,世界的に著名な科学者として知られる西澤潤一氏(岩手県立大学長)が「21世紀の人間と科学」と題して講演。その他,鼎談(後述),シンポジウム「多様な場における糖尿病教育・看護の充実」が企画された。

チーム医療に新たな展開が望めるか

 鼎談「チーム医療における糖尿病療養指導士のあり方」(司会=岡山大 川田智恵子氏)には,日本糖尿病学会から日本糖尿病療養指導士合同検討委員会委員長を務める北村信一氏(東京都済生会向島病院長),日本糖尿病教育・看護学会理事長の野口美和子氏(千葉大),実践医の立場として二宮一見氏(二宮内科クリニック)の3氏が登壇した。
 北村氏は,1993年から始まった日本糖尿病協会と日本糖尿病学会の合同による糖尿病療養指導士(以下,指導士)の役割などを紹介。昨年,第3セクター方式による「日本糖尿病療養指導士認定制度機構」を発足させ,本年秋から指導士の養成教育をはじめる予定であったが,現在は再検討すべく改めて糖尿病学会,糖尿病教育・看護学会,日本病態栄養研究会の3者による認定制度が検討されていることを報告した。また,アメリカの「糖尿病教育士」と日本が考えている「指導士」の違いや,認定資格などに触れるとともに,「どこにでもある結果,これまでに検証された報告を述べるのが学会発表ではない。新たな考察を公の場に問い,論議するのが学会の場」と,安易な学会発表のあり方に警鐘を鳴らした。
 野口氏は看護の視点からの患者指導の位置づけを述べ,「患者のための学習をどう進めるかが医療者にとっての問題だが,一方で患者のセルフケア教育が,糖尿病には特に必要」と強調。また,「糖尿病教育・看護分野の認定看護師」も検討していることも報告し,「自己注射の指導は,多職種にもできるが,患者の療養指導は,専門性を生かした看護職の役割」と述べた。
 二宮氏は,盛岡市で開業をしているが,盛岡医療圏35万人のうち,2万3000人が糖尿病患者(推定)であると報告。若手糖尿病医の研究会,盛岡市看護研究会を組織し,コメディカルを対象とした講習会を開催するなどの活動を紹介した。
 なお,総合ディスカッションの場では,糖尿病療養指導士養成の目的は,糖尿病患者の健康と合併症予防であり,そのためのシステム構築には医師の理解が必要との意見の他,病診・診診連携などの,地域協力が特に重要になることが示唆された。またその問題点と課題としては,(1)地区医師会と行政の理解,(2)地区糖尿病専門医の献身的,公益的活動,(3)地域住民とのネットワーク作りと機能化,などが指摘された。
 最後に北村氏は,「糖尿病を知らない一般医は,糖尿病を軽視している。また,『おれたちにケチをつける職種を作らないでくれ』という医師がいる現実もある。糖尿病の療養指導にはチームでかかわる必要があるが,その中心をなすのが専門性を生かせる看護職であろう」と述べた。
 なお,次回は明年9月23-24日の両日,横浜市のパシフィコ横浜で開催される。