医学界新聞

 

第4回日本看護サミット'99開催


 1996年に岐阜県で始まった日本看護サミットは,今年で4回目を迎え,さる9月16-17日に,木村照子会長(滋賀県看護協会長)のもと,「日本看護サミット'99 in滋賀」が,大津市のびわ湖ホールで開催。「ひと,くらし,看護の未来-新しい時代のために,看護がなすべきこと」をテーマに,4つのフォーラムが企画された。

これからの看護職

 フォーラム I「新しい時代の看護職員とは」(座長=法政大教授 衛藤幹子氏)では,看護職がプロフェッショナルとして政治的・社会的に発言していく必要性や,その意義について話し合われた。
 最初に登壇した,清水嘉与子氏(参議院議員)は,「『誰かがやってくれる』ではなく,各自がそれぞれの立場で発言すべき」と口演。国会議員として「国会で言えるような理論的なデータがほしい」とも語った。
 一方,南裕子氏(日本看護協会長)は「看護職と日本看護協会との間でフィードバックが必要」とし,同協会を医療現場に役立てる意向を提示。また,田村やよひ氏(厚生省健康政策局看護課長)は,看護研究研修センターでの勤務経験をもとに,(1)疑問や気づきを周囲の人々に提案する力,(2)専門的で高い技術,の必要性を語った。
 総合討論では,発言方法や職域拡大などについて話し合われ,「発言は工夫して,根気よく」(南氏),「もっとフランクに発言を」(清水氏),「研究も社会への影響を考えて」(田村氏)などの意見があがった。

情報開示は患者の権利

 フォーラム II「患者の権利と情報開示」(座長=聖路加看護大教授 岩井郁子氏)では,(1)診療情報提供(カルテ開示),(2)インフォームドコンセント,(3)医療従事者(特に看護職)の役割,の3つに焦点をあて,意見が交わされた。
 中村民世氏(セカンド・オピニオンを推進させる会)は,「医師と患者が情報を共有していない。患者を説得するのではなく納得させてほしい」と主張。続いて岡谷恵子氏(日本看護協会常任理事)は,患者の自己決定・自己責任を重視する発言を行なった。また,宮坂雄平氏(日本医師会常任理事)は,カルテ開示の義務化が進む中,行政側に苦情処理の窓口を作るべきと提案。最後に坂本百大氏(日本生命倫理学会長)が,「これからの生命倫理を担うのは看護職」と看護職の役割に期待した。

24時間在宅サービスとコスト意識

 フォーラム III「24時間在宅サービスを求めて」(座長=NHK 村田幸子氏)では,堀井とよみ氏(滋賀県水口町),長谷川美津子氏(セコム),高井康行氏(厚生省介護保険制度施行準備室長),石川治江氏(ケアセンターやわらぎ)の4氏が登壇。水口町での実践例をもとに,24時間在宅サービスの課題や方向性を検討し,特に患者・家族とのかかわり方や,他の福祉職との連携,サービス提供者の質の向上について話し合われた。
 また,フォーラム IV「看護職員に求められるコスト意識」(座長=滋賀医大教授 筒井裕子氏)では,介護保険の導入や医療保険財政の改革が進められる中での,看護界におけるコスト意識が模索された。演者は,辻哲夫氏(厚生省大臣官房審議官),村松静子氏(日本在宅看護システム),冨永芳徳氏(公立甲賀病院長),守山伸子氏(鶴巻温泉病院副院長)の4氏で,それぞれの立場から,以下のような意見を述べた。(1)辻氏:総合的な視野から見ている看護職が,コストと質をコーディネートし,むだの排除を行なってほしい。(2)村松氏:ニーズに合わせて臨機応変な判断力が必要。(3)富永氏:看護料の細分化も考えるべき。(4)守山氏:病院,利用者,職員の3者の満足度を向上させることが目標。
 一方フロアからは,「看護職員は質の向上に向けて頑張っている。労働条件改善も視野に入れた大きな枠組みの改革を検討してほしい」という意見もあがった。
 なお,次回の日本看護サミットは,明年9月13-14日に,三重県で開催される。