医学界新聞

 

言語聴覚士卒後研修会開催-国際医療福祉大学

谷合信一(わかば病院・リハビリテーション課)


初の有資格者が誕生したST

 言語聴覚士は,コミュニケーションに問題を持つ人々に対して,援助を行なう専門職である。長年の懸案だった言語聴覚士法が1997年12月に成立し,本年3月に第1回言語聴覚士国家試験が実施され,有資格者4003名が誕生した。
 国際医療福祉大学は1995年4月に新設された医療福祉系の大学で,各学年80名の定員で言語聴覚士の養成を行なっている。今春,第1期生が卒業し,全国の医療・福祉機関で言語聴覚療法に携わっている。本学科は卒後教育に熱心に取り組んでおり,本学同窓会言語聴覚障害学科会主催により,第1回卒後研修会を栃木県喜連川町のハートピアきつれ川で7月31日-8月1日の2日間開催した。

社会のニーズに応えられる専門職をめざして

 研修会では,卒業生の資質向上と情報交換を目的として,ワークショップと症例検討会を行なった。1日目のワークショップのテーマは「摂食・嚥下障害のリハビリテーション」で,同大学の西尾正輝氏の講演があり,嚥下の解剖・生理学から訓練方法までを,具体的な実技指導を含めて学んだ。特に,健常者の嚥下についてVF(嚥下造影)映像を用いて解説し,「健常者の嚥下にもさまざまなバリエーションがあり,嚥下障害の臨床ではそれを数多く見ておくことが重要である」と強調された。1日目の夜には懇親会があり,久々に同窓生と教員が交流し,熱心に語り合った。
 2日目は,同窓生による症例検討会を行なった。発表演題は,「流暢性失語の呼称障害の分析」,「若年者の高次脳機能障害のリハビリテーション」,「小児人工内耳装用者の単語聞き取り検査の検討」,「重症心身障害児者施設における周辺児への働きかけ」の4題であった。各演題とも,言語聴覚士になって4か月間の臨床をまとめたもので,初心者ならではの視点と感性で,混沌とした臨床をなんとか整理しようとする意欲的なものであった。発表に対して,参加者から自分の臨床経験を含めた質問やコメントが数多く出され,熱のこもったディスカッションが繰り広げられた。最後に,教員から臨床家として第一歩を踏み出した同窓生に具体的なアドバイスと激励の言葉が送られた。
 現在,医療・福祉の領域では,さまざまな構造改革が進んでいる。言語聴覚士としてスタートしたばかりの同窓生は,変化する社会の中で,言語聴覚障害を持つ人々のニーズを敏感にキャッチし,それに応えられる知識と技術を身につけた専門職に成長することを,改めて心に刻んだ2日間であった。