医学界新聞

 

第47回日本心臓病学会開催


 第47回日本心臓病学会学術集会が,村山正博会長(聖マリアンナ医大教授)のもとで,さる9月13-15日,横浜市のパシフィコ横浜において開催された。
 1970年に「臨床心音図研究会」として発足した同学会は,「臨床心臓図学会」を経て現在のように心臓病学全般,さらに関連分野としてのプライマリケア,リハビリテーション,医用工学,検査医学,看護・保健学などにまで広がった幅広い学会に発展し,春の「日本循環器学会」と並んでわが国における循環器2大学会として定着した。
 今回の学術集会では,会長講演「Exercise Cardiologyの臨床心臓病学への貢献」,3題の招請講演,シンポジウム4題,パネルディスカッション5題,ビジュアルワークショップ3題の他,教育セッション13テーマ,モーニングセミナー14テーマ,口演507題,ポスター発表439題が企画された。また学術集会の前日には,ACC(American College of Cardiology)とのジョイントシンポジウム「ACC/AHA Practice Guidelineとわが国での問題」も開催された。

 「最近の心臓病学の発展は生命予後とQuality of Lifeをどこまで改善したか」を学術集会を通じての標語とした今学会のシンポジウムでは,「画像診断による心機能の評価の進歩」(本紙第2357号で既報),「右心不全をめぐって」,「わが国の女性における虚血性心疾患」,「心臓病学校健診の現況とあり方」の4テーマが,またパネルディスカッションでは,「運動療法は心不全治療法の1つとなり得るか」,「冠動脈インターベンションとバイパス手術は長期予後をどこまで改善させたか」,「心臓病患者の看護と評価;入院から訪問看護まで」,「3Dイメージングによる冠動脈病変検出の進歩;CAGに代われるか」,「心臓病の病診連携のあり方-プライマリケアから在宅ケア」の5テーマが企画された。
 さらに,「チーム医療委員会ワークショップ-CCUをめぐるチーム医療を考える」(司会=東京女子医大 笠貫宏氏,日本看護協会 岡谷恵子氏)では,日野原重明氏(聖路加国際病院)の基調講演「チーム医療」に続いて,「CCUにおける業務分担の現状と問題点」,「PostCCUにおけるチーム医療」,「集中治療における看護婦の役割」,「重症集中ケアにおける認定看護婦」,「集中治療におけるチーム医療の心理と評価」などの討議が企画された。


心臓病の病診連携のあり方-プライマリケアから在宅ケア

 心臓病,特に虚血性心疾患は発症早期の致死的不整脈による急性心臓死が多く,プレホスピタルケアが重要で,早期の再灌潅流療法が急性期予後のみならずQOLと長期予後改善に有効とされている。
 また心臓病の救急医療体制としては,心停止に対する市民の1次救命処置,救急搬送途上の救命処置,速やかな専門施設への搬入などが問題となる。さらに急性期を無事切り抜けた後にも,QOLや長期予後改善には患者教育や長期ケアによる再発予防や心機能温存療法が重要である。
 高齢化社会とともにわが国でも医療施設の役割分担の明確化が推進され,病診連携の構築が重要課題であるが,パネルディスカッション「心臓病の病診連携のあり方-プライマリケアから在宅ケア」(座長=東邦大 上嶋権兵衛氏,大林病院 大林完二氏)では,急性期から慢性期を通した幅広い心臓病の病診連携のあるべき姿が,追加発言を含めて10名のパネリスト(倉敷中央病院 後藤剛氏,日医大 清野精彦氏,駿河台日大病院 渡辺郁能氏,東邦大 小野邦春氏,船橋市立医療センター 福澤茂氏,聖マリアンナ医大 榊原雅義氏,東京都港区医師会 小笠原定雅氏,岩手医大 上嶋健治氏,大田区羽田医院 矢端幸夫氏,埼玉県朝霞地区医師会 橋本啓一氏)によって検討された。

Mobile CCUと4T

 まず後藤氏は,倉敷中央病院におけるMobile CCU(MC)の活動状況を通して病診連携を検討。AMI(急性心筋梗塞)症例をMC収容症例と非MC症例とに分けてその意義を詳細に分析した結果,「MC収容症例の有病率は高く,その運用は本来の趣旨にそうものである。AMI症例の70%がMC収容例であり,死亡率からみた有用性は見出せなかったが,より広い範囲の病診連携には有効であった」と報告した。
 また清野氏は,日医大が東京地区循環器実地診療医との共同研究(Tokyo Troponin T Trial=4T,代表は司会の大林氏)のサブスタディとして行なわれた急性冠症候群(ATS)の初期診断と病院診療連携について報告。
 4T参加16施設を受診し,ATSが疑われた症例を対象にして,心筋Troponin T全血迅速判定法(TnT)を実施し,症状・理学的所見・心電図による従来の診断と,診断精度,効用について比較検討した清野氏は,「ACS初期診断の現況とTnT導入の効用が明らかにされ,初診時治療ガイドラインの必要性が提起された」とまとめた。

現場出動型ドクターカーシステム

 次いで福澤氏は,ドクターカーシステムを基軸にした院外心肺停止に対する船橋市のプレホスピタルケアの展開を検証。
 同市では1993年から24時間365日体制の,いわゆる「医師の現場出動型のドクターカーシステム」を開始し,院外心肺停止に対して現場での救命活動を行なってきた。福澤氏は「現場出動型のドクターカーシステムは,院外心肺停止のみならず,脳血管障害,各種のショック,重症外傷などのプレホスピタルケアをも切り開いていく上で重要な役割を担っており,今後は現場での診療内容の向上と標準化を図ることが課題と考える」と報告した。
 小笠原定雅氏は,地区医師会の心臓病予防のための運動療法の効果と,かかりつけ医の役割を検討。港区医師会では,過去4年にわたり行政機関と地域の循環器専門施設と連携して,日本医師会認定健康スポーツ医の会員が運動負荷試験による運動処方を作成し,心臓病の予防を目的として非監視型運動療法を行なってきた。これらを踏まえて小笠原氏は「この療法は問診や運動負荷試験などにより対象を選択すれば効果的に行なえ,1次予防や2次予防を目的とした運動療法において専門施設とかかりつけ医の病診連携における役割分担が可能」と指摘。さらに上嶋氏は専門医からの働きかけの重要性を強調した。