医学界新聞

 

第40回日本人間ドック学会開催


 さる8月26-27日に,東京・新宿区の京王プラザホテルにおいて,第40回日本人間ドック学会が開催された。櫻井健司会長(聖路加国際病院長)のもと,「21世紀に向けての健康創り」をテーマに行なわれた今学会では,学会長講演「肝臓,胆のうの外科」,招待講演「齢をとることの意味」(北里大教授 養老孟司氏),特別講演「人間ドックの功罪」(聖路加国際病院理事長日野原重明氏),シンポジウム「21世紀に向けての人間ドックのハードウェア・ソフトウェア」(司会=牧田総合病院附属検診センター院長 笹森典雄氏,三井記念病院総合検診センター名誉顧問 清瀬闊氏)などが企画された。また今学会では,人間ドック認定指定医の第1回の認定が行なわれ,800名の指定医が誕生した。

人間ドック認定指定医制度

 日本病院会では,人間ドックの使命である国民の健康増進,疾病予防のための生活指導(1次予防),さらに早期発見・早期治療による健康の回復(2次予防)の重要性を認識し,人間ドック担当医の資質の向上を図る目的で,人間ドック認定指定医(正式名称:日本病院会・日本人間ドック学会と日本総合検診医学会の認定する人間ドック指定医)制度を発足させた。これに伴い今回の日本人間ドック学会では,第1回の指定医800名が認定された。なお,同指定医の認定条件は,「人間ドック事業の理念を十分に理解し,人間ドック認定指定医委員会所定の研修を終了し,かつ医学経験・人格ともに水準に達した医師で,日本病院会人間ドック認定指定医委員会が承認した医師」となっている。

人間ドックの進歩

 2日目のシンポジウム「21世紀に向けての人間ドックのハードウェア・ソフトウェア」では,人間ドックの現状と課題について,6名の演者の発表がなされた。
 最初に河野均也氏(日大)が,人間ドックの進歩の歴史を説明。検査の正確性,速度,効率が上昇したことを示す一方で,微生物検査の自動化の遅れを指摘した。またコンピュータ技術に関しては,田中義房氏(東芝メディカル社)が解説。「ネットワークによる連携の向上とコンピュータの高性能化が,人間ドックの進歩に貢献した」と語り,関連施設を含めた広範囲な情報共有を今後の課題にあげた。
 日赤熊本健康管理センターの所長である小山和作氏は,「人間ドック施設は予防医学の専門施設であり,医療施設(病院)と混同されるべきでない」と発言。人間ドックのめざすものとして,(1)がんを中心とした疾患の早期発見,(2)生活習慣病を中心とした疾患のハイリスクの発見と対策,(3)より豊かな人生と快適な暮らし,の3つをあげ,QOLの重視を訴えた。
 一方,行政の立場から松谷有希雄氏(厚生省健康政策局)が登壇。医療提供体制の改革が検討されている中,改革の方向性と,そこでの人間ドックの意義を発表した。また,人間ドックに対する医療保険については,前向きながら「まだ議論が始まったばかり」と語るにとどめた。
 健診データの管理と活用法については,吉田勝美氏(聖マリアンナ医大)が講演。大量のデータの中からモデル(因果関係)を見つけ出す“データマイニング技術”の有効性を提示し,「この技術を用いれば,検査値などから疾病の発症しやすいパターンを見つけられる」と発表した。
 続く高橋行子氏(PL東京健康管理センター)は,医療者側からみた受信者へのサービスに関して,サービスの変遷を説明。今後は2次予防だけでなく1次予防が不可欠とし,「受診者個人のプロファイル作成や健康危機度評価(HRA)を駆使して,疾病の1次予防に力を入れている」と語った。一方,受診者の立場から中田薫氏(NHK)が登壇。医療者側との話し合いの場と,情報の共有の必要性を強く求めた。