医学界新聞

 

メディカル・インタビュー 基本にして最高の臨床技能

患者さんの信頼と安心が第1歩


 良好な医師-患者関係を築くことができなければ有効なメディカル・インタビュー(以下,インタビュー)はできず,適切な診察を行なうのは難しい。
 医療面接試験に臨んだ昭和大の5年生たちは,患者と良好な関係が築けただろうか。本試験に協力したSPの方たちの評価や感想を基に,良好な人間関係を築くためのポイント,学生たちの弱点を考える(関連記事)。

とても大切な第1印象

 試験開始の合図が出る。学生はフルネームで患者を呼び,診察室へ導き入れる。
 「○○さん,お入りください。どうぞお座りください。私は医学生の××と申しますが,面接をさせていただきます。今日はどうされましたか?」
インタビューが始まる。
・清潔で整った服装(全員がきれいな白衣を着用)
・患者への挨拶
・自己紹介
患者を客人として迎える態度は十分にできていた。
 患者役を務めた模擬患者(SP)からも,「(患者を)立って迎え,挨拶をしてくれた。とても好印象」,「『どうか楽にしてください』とか,『今,大丈夫ですか』などと自分を気遣う言葉をかけてくれて嬉しかった」などの感想が寄せられている。「マナーや態度は,適切と思いますか」という項目について,SPから「いいえ」と評価された学生はゼロ。「あんまり」と評価された学生も105人中わずか9人であった。
 学生たちは,SPからまずまずの評価を得たようだ。
 SPのコーディネートを担当した佐伯晴子氏(東京SP研究会)は,「患者さんは病院という非日常の場所に身を置いているだけで,身体の不調とは別に緊張や不安を覚えることがある。まず,外見から患者さんを安心させ,信頼させることが大切だということを忘れないでほしい」と話している。

コミュニケーション技術

 インタビュー中は患者の話によく耳を傾けることが大切である。また,患者が話しやすいような配慮も求められる。患者から医療情報を引き出すコミュニケーションの技術は訓練して身につけなければならない。
 具体的には以下のことに気を付けたい。
・顔を上げて,患者の眼を見て話をきく
・うなずきや視線で話を促進する
・患者が「親身になって聞いてくれている」と感じるように行なう
・わかりやすい言葉で話す(専門用語は使わない)
 写真を見ると,学生たちが患者のほうを向き,視線で話を促そうとしているのがわかる。SPからも「机の上のメモではなく,しっかり患者の眼を見て聞いてくれた」,「専門用語を使わないように意識しているのがわかった。『頻度』や『○○低下』,『□□増加』など,ついつい使ってしまいがちな用語もなかった」との好印象が聞かれた。
 しかし,「話をよく聴いていると思いますか?(うなずきや視線も含めた促し,間を待つ,自由に話せる工夫,さえぎり,質問)」という評価項目では,「いいえ」という回答はなかったものの,「あんまり」と評価された学生が35名あり,良好なコミュニケーションを行なうためのテクニックの習得に,もう少し努力を要することが示唆された。
 試験終了後には,学生たちに自分たちのインタビューが収録されているビデオを見せ,自己評価,他学生の評価を行なった。高木氏は「自己評点はSPの評点に近似しており,総じて厳しく評価していたが,他の学生に対しては甘い評点であり,認識が甘い学生もいる」と厳しい眼を向ける。今後は,「面接の悪い点をフィードバックするシステムを早急に確立したい」と述べ,より効率的な教育システムの構築に意欲を見せている。
 今回の試験結果は,学生たちがインタビューを学ぶ,4年次の「内科診断学実習」や5年前期BSLの内容改善のためにフィードバックされるという。「患者本位の医療」へ向けて,医学教育が少しずつ動き出している。