医学界新聞

 

第7回全国老人ケア研究集会開催


 さる7月10日,第7回全国老人ケア研究集会が,鎌田ケイ子会長(都老研)のもと,「介護保険前夜をみつめて」をテーマに,東京・千代田区の九段会館で開催された。
 本集会では,会長講演「介護保険制度下で求められる老人ケア」に引き続き,呆け老人をかかえる家族の会(愛知県)を代表し,小菅もと子氏が特別発表「痴呆の義母に絵画を描かせて」を口演。義母の小菅マサ子氏も車いすで登壇し,絵画教室に通いはじめてから描いたという水彩画や油絵がスライドで紹介されると,会場からは共感と感嘆の声があがった。なお,午前中にはこの他に4題の研究発表も行なわれた。

介護保険の実施に向けて

 午後からは,総会に続いてシンポジウム「介護保険への取り組み」(司会=鎌田氏,沖藤典子氏)が行なわれた。同シンポジウムでは,(1)療養型病床群,(2)特別養護老人ホーム,(3)老人保健施設・在宅介護支援センター,(4)訪問看護ステーション,(5)市町村の5つの立場から,2000年4月から実施される介護保険に向けて,どのような対策を講じているかなどの意見が述べられ,その後の総合討論に結びつけた。
 (1)では阿蘇貴久子氏(札幌・西円山病院看護部長)から,介護支援専門員の育成と確保の状況や,利用者のニーズに応えるべく看護婦,MSWらで組織したアセスメント課が実施している介護保険導入へ向けたシステム構築の実態など,在宅支援機能の充実に向けた取り組みが紹介された。
 また(2)で,新谷弘子氏(パール代官山理事長)は,ボランティア活動の組織(社会福祉活動教育研究所)から本年4月に開所した特別養護老人ホーム「パール代官山」を紹介した。同所は,介護支援センター,デイサービスなどを併設し,多角的に福祉サービスを提供する「福祉総合プラザ」の一角をなす。渋谷区・鉢山町という都心型のホームであり,住民参加型の活動を行なっている同プラザは,その可能性を含めて今後の動向が注目されよう。なお,新谷氏はその基本理念として,(a)人間らしい生活,(b)その人らしい生き方と尊重,(c)お互いを伝えあう温もり,をあげた。
 さらに(3)では川添チエミ氏(京都市・行陵会婦長)が,「誰がケアプランをたてるのがよいのか」などを話題にケアプランへの取組みを紹介。(4)は,長谷川美枝子氏(釧路地域訪問看護ステーション)が,広域をカバーする北海道総合在宅ケア事業団の活動と取組みを報告。(5)では,仲田富三雄氏(品川区役所)が,「65歳以上の区民高齢者5万3000人のうち9割は元気な高齢者」と述べ,その高齢者参加プログラムを紹介。また,介護保険への準備や介護サービスの基盤整備についても解説した。
 なお,同研究会は本年中にNPO法人として法人化を図り,明年からは「高齢者ケア協会」の事業の一貫として研究集会を開催する予定。また,明年はこれまでの東京地区から初めて地方に議論の場を移し,7月8日に札幌市で開催される。