医学界新聞

 

第35回日本肝臓学会総会開催


  第35回日本肝臓学会総会が,さる6月24-25日の両日,藤原研司会長(埼玉医大)のもと,東京国際フォーラムで開催された。本年度より,臨床の立場から運営されるDDW-Japanへは,日本肝臓学会大会が参加するため,本会はDDW-Japanから独立した学術集会となった。そのため,やや基礎面に重点が置かれることとなった本開催では,Nelson Fausto氏(ワシントン大医学部)による特別公演,シンポジウム「肝壊死,再生,繊維化および発癌の病態連繋」の他,臨床テーマではポスターシンポジウムが企画された。また,一般演題により構成されたパラレルシンポジウムは,22ものテーマを数えた。なお,優れた肝臓学研究に贈られる織田賞は,小池一彦氏(東大)が受賞した。

IFN治療による無症候性キャリア

 ポスターシンポジウム「インターフェロン治療により無症候性キャリアとなったC型慢性肝炎の病態と長期予後」(司会=東大 小俣政男氏,自治医大 井廻道夫氏)では,59題の応募の中から代表的な研究11題が選ばれ,口演と討論が行なわれた。インターフェロン(IFN)治療を受けたC型慢性肝炎の約3割の症例ではHCVが消失し,肝機能の改善が見られる。これらでは長期観察により肝組織障害が改善し,肝細胞癌の発生はほとんどみられない。その一方で,IFN治療を受けた約1割のC型慢性肝炎症例ではC型肝炎ウイルス(HCV)は消失しないものの,肝機能は改善する。本シンポジウムでは,これらの集団の特徴を臨床的,基礎的に検討した。
 伊藤眞介氏(埼玉医大)は「HCV陽性であるにもかかわらず,血清ALT活性が正常化した不完全著効例(IR)はHCVが陰性化した著効例に比してHCV量高値,Genotypeでは1b型が多かった。また,無効例との比較では,ATL活性と血小板数に差異が認められ,活動性が低く,進展度が軽度の症例では,HCVが陰性化しなくても,IRに移行する頻度が高い」と考察した。吉田晴彦氏(厚生省がん克服戦略事業肝がん発生防止に関する研究班)は「HCV陽性でありながらALTが持続正常化した症例は,繊維化の程度が軽く,セロタイプ2型でIFN投与量の多い症例で生じやすかったが,HCV量との関連は有意ではなかった。また,肝がんの発生はHCV陰性化例と同様に低下した」と報告した。
 一方,進藤道子氏(明石市民病院)と新上哲生氏(鹿児島市立病院)は,IFN治療により無症候性キャリアとなる機序について,「ウイルス側よりホスト側の要因の関与が強い」と指摘。特にその免疫機構の変化の重要性を強調した。